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リモートワークをしながら世界一周、その中で見えた働き方の可能性とは―伊佐知美×freee前村菜緒対談

これからの暮らしや生き方を見つめ直すきっかけを掲載するウェブメディア「灯台もと暮らし」の編集長の伊佐知美さん。彼女は2016年、会社に所属したまま、世界一周リモートワークを行い話題になりました。なぜ会社に所属しながら海外リモートワークが実現できたのか、パラキャリ編集長の前村菜緒が話を聞きます。

  • 伊佐知美さん

    取材協力者:伊佐知美さん

    編集・ライター・フォトグラファー。三井住友カード、講談社勤務を経て独立。現在は(株)Waseiに所属。スーツケース1つで国内外を旅しながら働くリモートワーカー。著書『移住女子』(新潮社)、連載「伊佐知美の世界一周さんぽ(ことりっぷ)」など。

  • 前村菜緒

    聞き手:前村菜緒

    freee株式会社 個人モバイル事業本部 マネージャー。1988年生まれ、2013年東京工業大学大学院卒。学生時代、freee創業期3名の時期からエンジニアインターンとして参画。広報、マーケティング、事業戦略など幅広く担当。2017年に開業し、個人としても新たな働き方を実践中。

5つの仕事を持ちながら、世界一周に飛び出したワケ

  • 前村

    前村

    伊佐さんはメディアを運営したり、イベントを開いたり、本を出されたりと、いろいろなお仕事をされているイメージがあります。名刺の肩書はどうされているのだろう……と思ったら、「灯台もと暮らし」の編集長とフォトグラファーの2つなんですね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    前提として、私はウェブメディア運営などを手がける「Wasei」の社員の立場があります。なので、名刺には会社の事業である「灯台もと暮らし」の編集長を入れつつ、「書いて撮る人」ということも伝えたくてフォトグラファーも入れています。編集者・ライターが写真を撮るというイメージを持っていない方も多いように感じていたので。

  • 前村

    前村

    今は主にどういう仕事をされていますか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    5つの軸があります。1つ目は「灯台もと暮らし」の編集長業務です。2つ目が伊佐個人としてのライター業務で、2017年1月に『移住女子』(新潮社)という書籍を出版しました。3つ目はフォトグラファーで、取材先の撮影や、食事、物撮りなどを担当することが多いです。4つ目はオンラインサロン「編集女子が”私らしく生きるため”のライティング作戦会議」の運営。5つ目がメディア対応やイベント運営などです。

  • 前村

    前村

    書くことから運営まで、かなり業務の幅が広いですね。多くの仕事を抱えながらも、世界一周に旅立ったのはどういった理由があったのでしょうか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    村上春樹の『遠い太鼓』や沢木耕太郎の『深夜特急』など、もともと紀行文が好きなんです。本に憧れて場所を問わずに生きたい、そして海外にも行きたいと、ずっと思っていました。2016年4月に旅立ち、途中一時帰国を2回挟んで今年の4月まで行っていたのですが、旅の終わりが近づくにつれ、「帰るのなんて嫌だ……」と、寂しく感じていましたね(笑)。

  • 前村

    前村

    すっかりなじんでいたのですね(笑)。でも、行きたいと思っても、それを実現するのにはかなりの勇気がいるように思います……。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    「灯台もと暮らし」のメインテーマは「これからの暮らしを考える」。当初は国内の暮らしを多く取材していました。その中で、仕事と海外に行きたいという個人の思いが、次第にかけ離れてしまったんです。それについて、ずっと葛藤していて……。

  • 前村

    前村

    海外へ「行きたい」という思いが、「行ける」に変わったきっかけには何があったのでしょうか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    ライターを始めた最初の頃は、原稿料が1本500円でした。それが、半年ほどで40倍に。経済的覚悟ができたことは一つの後押しとなりました。あと、私は20代を30代からの土台作りの期間と考えていて。29歳でやりたいことができていなかったので、焦っていたというのも、決断のきっかけですね。

5つの仕事を持ちながら、世界一周に飛び出したワケ

リモートワークに欠かせないのは、仲間との信頼関係

  • 前村

    前村

    海外に行くとなると、リモートワークをせざるを得ない状況になりますが、そこに不安はありませんでしたか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    なかったですね。ライティングという仕事の性質もあるとは思いますが、私の場合はもともと出張が多く、あまり東京にいない生活をしていたので、自然とリモートワークをする環境にいたのが大きかったかもしれません。なので、リモートワークをする場が国内から海外に変わっただけという印象でしたね。

  • 前村

    前村

    下地ができていたというわけですね。freeeにもセブ島で働いてるメンバーやオランダに移住したメンバーがいますが、業務に支障があるかと思ったら、意外と平気なんですよね。とはいえ、仕事によっては国外まで持ち出せない内容もありますよね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    そうですね。世界一周を決めるにあたって、そのとき持っていた仕事に対し、海外で「できる」「できない」の整理をしました。「できない」例でいえば、日本での取材や打ち合わせ、イベントの類。でも、執筆はどこでもできます。なので、『移住女子』の場合は国内にいる間に必要な素材を集め、それをもとに海外で執筆をしていました。あとはオンラインサロンの運営もリモートでできましたね。

  • 前村

    前村

    伊佐さんはWaseiの社員ですが、世界一周を実現することについて、会社からは何か言われませんでしたか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    前々から海外に行きたいと言っていたのもあってか、「やっと行くんですね」と言われました(笑)。

  • 前村

    前村

    周りからも「海外に行きたい」という気持ちが認知されていたんですね。海外に行くなど、やりたいことを実現させるために、メンバーが仕事を抜けたり休んだりするときの社内ルールはありますか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    社員の中には、フジロックが好きだからそこは絶対休むという人もいるんです。それぞれ好きなことを大切にし合うようにしていますが、特にこれといったルールはありません。自分の仕事は自分で責任を持つ、チームでやっていることをつねに意識する。これがあれば大体のことは大丈夫な気がしています。というのも、弊社の場合は誠実であれという不文律があって、人ありきで動いているんですね。なので、そこを明文化しようとする方が、不都合が起きるような気がします。ただ、これは人数が少ないからこそできることかもしれません。

  • 前村

    前村

    信頼関係に重きを置いているんですね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    社長はよくエベレスト登山に例えて「登頂できるチームであれ」というのですが、全員がプロフェッショナルじゃないとエベレスト登山は成功できないですよね。馴れ合いではなく、各個人が独立しているからこそチームが組めると考えています。そしていつでも「解散」といえるチームを作りたいと。

  • 前村

    前村

    解散したからって、そこで縁が切れるわけじゃないですしね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    そうなんです。個としてのスキルを持ちながら、チームとしても信頼関係を持って働けるようにと考えていますね。

  • 前村

    前村

    人と人がつながって仕事をしている――相互理解の深さが、リモートワークを円滑に進めるカギになっているといえそうですね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    そうですね。実際今も、「灯台もと暮らし」の編集メンバーのうちの1人が総務省の地域おこし協力隊に応募して、北海道に行っています。協力隊の間は自治体雇用になるので、会社との雇用関係は業務委託になりましたが、リモートワークでやり取りしています。

リモートワークに欠かせないのは、仲間との信頼関係

リモートワークは万能じゃない……会って話す方が伝わりやすいことも

  • 前村

    前村

    私は今マネジメントも行っているので、メンバーの近くにいないと業務を円滑に進めづらい場面があります。なので、リモートワークでどう働けるか考えてしまうことも……。伊佐さんはリモートワーク中のコミュニケーションは、どのように解決しましたか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    コミュニケーションの取り方は課題ですね。週1回スカイプミーティングを行っていたのですが、なかなか難しい部分もあって。会えば3秒で伝わる話が10分経っても伝わらなかったりしました。微妙なニュアンスや温度感は、会って話す方が伝わりやすいのは事実ですよね。仕事内容によって向き不向きはあるので、お互いがしっかりと意思疎通を図るには、ある程度時間をかけざるを得ないこともあると感じました。

複数の仕事を組み合わせながらも、それぞれに共通する核がある

  • 前村

    前村

    リモートワークに限らず、伊佐さんは複数の仕事を組み合わせるパラレルキャリアも実現しています。そうすると一つのことを突き詰められないようにも思うのですが、どのように取り組んでいるのでしょうか。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    もともと書く仕事をしたいと思っていたのですが、最終的にはエッセイや小説などを書きたいと思っています。でも、今のままでは無名なので読んでもらえない。そこで、「やりたいこと×得意なこと×求めてもらえること」の交差点を探しました。それが現在のインタビューやメディア運営だったのかもしれません。

  • 前村

    前村

    今の仕事がそこにとどまらないのは、認知してもらう狙いがあってということでしょうか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    そうですね。一見すると5つの軸はバラバラに見えるかもしれませんが、「会社と自分の経験にとって、何かプラスになる」という点で関連があります。たとえば、ウェブメディアでは写真とライティングはほとんどセットといえますし、オンラインサロンは編集のスキルを活かしつつ、仕事仲間やコミュニティをつくるためでした。オンラインサロンの人と出会ったことで新しい仕事が生まれたり、旅先の縁から「灯台もと暮らし」の地域特集につながったりすることもありました。

  • 前村

    前村

    パラレルだけどつながってる。それぞれの仕事が互いに影響し合っているんですね。私も技術、マーケティング、広報といろいろなことを経験しましたが、それぞれの経験があるからこそ影響し合って、スキルアップの相乗効果を感じたことは確かにあるかもしれません。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    今持っている5つの軸に限らず、どんなお仕事でもリンクする瞬間があるんですよね。Waseiに入社する前は金融系企業で法人営業をしていたのですが、そのときのスキルは、自治体で年齢が上の方とお仕事するときの対応に役立っていると思います。さらに、出版社ではアシスタントとして勤めていたこともあるのですが、そのときは企画の下調べでひたすら雑誌を見ていました。その経験は、今の仕事のネタ帳づくりのベースになっています。

複数の仕事を組み合わせながらも、それぞれに共通する核がある

働く場所を多拠点にできる可能性があってもいいのでは

  • 前村

    前村

    今の拠点は、東京と、伊佐さんのご実家のある新潟ですよね。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    そうです。多拠点が現時点の理想です。

  • 前村

    前村

    単拠点にしない理由はありますか?

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    会社員だったころ、毎日会社に通う中で「これが働き方のすべてなのかな?」と疑問に思うことがありました。毎日でなくてもいいから、働く場所を選択できる自由があったらもっと楽しく生きられるのに、とその頃から漠然と思っていた気がします。

  • 前村

    前村

    その気持ち、わかるかもしれません。freeeは階によってオフィスの雰囲気が全然違っていて、会社という単拠点の場所だけど、疑似多拠点のような雰囲気があります。なので、社内にいながらも違う環境で仕事をしているような気分になれるのはいい気分転換かも。あとは地方にも支社があるのですが、そこで仕事をすることもできるんですよ。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    いいですね freeeさんのオフィスの作りやリモートワークへの理解もそうですけど、もっとそうした柔軟な働き方が当たり前になるといいなと思いますね。

  • 前村

    前村

    今日、伊佐さんのお話を伺いながら、リモートワークもパラレルキャリアも、もっと肩の力を抜いて始められるんじゃないかなと思いました。最後に、伊佐さんの今後の働き方について教えてください。

  • 伊佐さん

    伊佐さん

    私としては、会社に昨年世界一周リモートワークをさせてもらった恩返しをしながら、今年はまた別の新しいことに挑戦したいと考えています。

  • 前村

    前村

    新しい挑戦、応援しています! 今日はありがとうございました。

  • ライター:ミノシマタカコ

    WEB企画・ディレクション・運営業務等を経験し、2012年より自営業に。現在は主にライター/WEB編集として活動中。狛犬愛好家。

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