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ラーメンミュージシャン井手琢人さん「趣味が副業になったら、本業の幅が広がった」

趣味への熱い思いが、やがて副業に。

「ラーメンミュージシャン」という一風変わった副業を持つ井手琢人さんは、パラレルキャリアを15年にわたって実践しています。現在の本業は、株式会社フライヤーでの書籍のプロモーションマネージャー。それ以前も、テレビ局、出版社と忙しい業界を渡り歩いてきました。

趣味をどのように副業にしたのか、そしてそれが本業にどんな形で生きているのか。井手さんに話を聞きました。

本業以外で複数の顔を持ち、常に楽しい状態を保つ

――井手さんは、現在どのような働き方をされているのでしょうか? まず、本業について教えてください。

本業はフライヤーの社員として、書籍のプロモーションマネージャーをしています。ビジネスパーソン向けの本の要約サイト「flier(フライヤー)」を運営する会社で、僕は出版社の窓口として約30社を受け持っています。

メインの仕事は、ウェブ媒体でベストセラーの布石を作ること。そのほか、書店とのコラボレーション展開を仕掛けたり、文化放送やABCラジオにブックコンシェルジュとして出演したりしています。

――副業は「ラーメンミュージシャン」ということですが、これは「ラーメン」と「ミュージシャン」の造語ですよね? お仕事の中身を教えてください。

副業は井手隊長の名前で活動しています。

ラーメン関係は、おもにラーメンライターとしての仕事が多いです。現在、コラム連載を2本持っていまして、JTB「るるぶ.com」で「爆走!井手隊長の激ウマラーメン放浪記」を2015年2月より、「東洋経済オンライン」で昨年12月から書いています。そのほかは、Facebook LIVEのレギュラー番組「ラーメンミュージシャン井手隊長の 今3時?そうねだいたいね」のMC。時々、ラーメンコンテストの審査員を務めたり、コメンテーターとしてメディア出演をしたりします。

ミュージシャンは、サザンオールスターズのトリビュートバンドである「井手隊長バンド」と昭和歌謡・オールディーズユニットの「フカイデカフェ」で活動していて、毎月ライブを行なっています。オリジナルバンドの「NAPZAX」は現在、開店休業中です。

――複数の仕事をされていますが、本業は出勤日数が少ないのでしょうか?

本業の就業時間は、普通の会社員と何も変わりません。平日5日の出勤で、朝10時から外での打ち合わせがなければ夜の19時までです。

――ということは、平日の夜と休日が副業の時間?

実はラーメンの良いところは、取材をだいたい昼休みにできてしまうところなんです。

本業の打ち合わせをしながら食べたり、打ち合わせ終わりに食べたり――。ラーメンはどのエリアにもお店がありますし、遠い場所の打ち合わせにもラーメンがもれなく付いてくるんですよ? 交通費も会社から出て、最高じゃないかと(笑)。土日も食べますが、基本は週の頭にどの日の昼にラーメンを食べるかを決めています。原稿執筆は、ブログならば移動中、連載は平日の夜です。

ミュージシャン活動は、土日か平日の夜。ライブやリハーサル以外にも、練習をしています。

写真提供=井手琢人さん

副業の“好き”を突き詰めたら、本業で天職に出合った

――そもそも「ラーメン」と「ミュージシャン」を合体させたいきさつは何だったのでしょう?

バンドは高校、大学時代から活動していて、ラーメンの食べ歩きは大学3年から始めました。当初ラーメンの感想をノートに書いていましたが、ブログに書くようになると、見てくださる方が結構増えていきました。

結果として、音楽やサザンの仲間うちでは一番ラーメンに詳しい人、ラーメン仲間の間では一番サザンに詳しい人になりまして。そのうち、ラーメンの友人がライブに来てくれたり、サザン関係の友だちがブログを見てくれたりして、交流が生まれたんですね。

ふと「ラーメンミュージシャン」って面白いなと思って、名乗り始めました。時期は、WOWOWに新卒で入ってからです。WOWOWはもちろん、桑田佳祐さんに会いたくて入社しました(笑)。

――WOWOWはメディアの会社です。会社から副業の理解を得るには、大変だったのではないでしょうか?

当時は、ウェブ連載もありませんでしたし、他局のバラエティー番組でラーメン屋さんを紹介するような仕事も、出演料は発生しませんでした。それでもWOWOWの広報には、副業の声がかかるたびに、書類を提出していました。正直、お金になっていなかったからというのもあるのでしょうが、会社からは特に何も言われませんでしたね。

――その後、本業で出版業界に移られていますよね。

WOWOWの8年間では、広告とプロモーションを担当しました。僕はプロモーションの部署で宣伝業務に就いた時、自分に向いているな、天職だなと思ったんです。そこで、宣伝の仕事でほかの業界に視野を広げてみたくなりました。ちょうど、あさ出版と縁があり、社長から好きにやってくれと言われたので、入社しました。

副業の幅を広げて、本業の会社をも巻き込む

――あさ出版では、具体的にどんなお仕事をされていたのですか?

あさ出版は、ライトな読みやすいビジネス書を得意とする会社です。1万部も売れればヒットという世界で、ビジネス書の読者層は広いのに、意外と世間に知られていない。これは多くの人に知ってもらえるチャンスがあると思い、WOWOW時代に得たテレビの人脈を使って、さまざまなメディアとタイアップを仕掛けました。

社内のSNS発信のガイドラインも作りました。もともとラーメン関係でTwitterをやっていて、「SNSには後ろ向きなことは書かない」というポリシーでツイートをしていました。個人活動を生かすというと大げさですが、会社のSNS運営の基礎をつくる形になりましたね。

「ラーメンミュージシャン」の活動も続けていまして、「るるぶ.com」の連載はこの頃に始まりました。

写真提供=井手琢人さん

――「るるぶ.com」連載の話が出ましたが、ネットTVの番組も、あさ出版にいらした時に始まっています。木曜午後3時の生放送を担当するにあたって、会社をどうやって説得したのですか?

仕事絡みでUstreamの番組にゲスト出演したことがあったのですが、そこで僕を知ったプロデューサーの方から「井手さん、ラーメンとサザンについて、すごく詳しいらしいじゃないですか!」と声をかけられまして。毎週木曜の午後3時帯で、冠番組をやりませんかというお誘いでした。

木曜3時は完全に就業中の時間です。プロデューサーの方から「どういう形ならば、あさ出版が納得するのか、条件を聞いてもらえませんか?」と聞かれたんですね。社長に相談したところ、「会社の書籍を紹介したり、著者を出演させたり、プロモーション活動がOKならば、ぜひやりなさい」ということで、番組のMCを務めることになりました。

今年で番組は5周年ですが、現在勤めているフライヤーの社員がこの番組に出演したこともあります。そんな副業の縁でフライヤーにもつながって、あさ出版を辞めてからは、フライヤーがオススメする書籍を番組で紹介しています。

パラレルキャリアのメリットと課題

――パラレルキャリア15年選手の井手さんから見て、副業を持つ課題は、ズバリ何ですか?

時間が足りないですね。1週間が10日、1年が500日あったらいいなと切実に思います。ラーメン屋さんも行きたい店がたくさんあるんです。でも無理なんですよ、だって平日の昼食はどうあがいても5回しかないから(笑)。

ある程度、本業と副業が軌道に乗ると、お金のやりくりよりも、時間のやりくりが問題ですよね。

――では、パラレルキャリアのメリットは?

まず1つ目は、飽きないこと。副業も追い続ける価値のないものなら、とっくに辞めていると思うんです。でも、ラーメンもサザンも最強じゃないですか(笑)。どちらも追っても追っても、追いきれない存在で、日本中で知らない人がいない。それが何よりですね。

2つ目は、ラーメンに詳しいことが、本業のコミュニケーションに生かされていることですね。宣伝担当は、次に人に会った時に忘れられない存在にならないといけない。企画が上がったら、誰に頼もうかとパッと思い出される存在でないといけないと言われるでしょう? 特に男性はラーメン好きが多いので、ラーメンの話をしただけで、人との距離がぐっと近くなるんです。戦略などは関係なしに、次に会った時にものすごい距離が縮まっている(笑)。

最後は、一個のつまずきを引きずらないことです。本業でうまくいっていなくても、どこかで見切りをつけて、次の仕事に取りかからないといけない。もうズルズル引きずっていられないんです。

人脈面でも金銭面でも恵まれたのは、1つの仕事に固執しなかったから

――井手さんの働き方は、会社員でありつつ“好き”も追及できて理想的な姿に思えました。

もし、ラーメン界だけで仕事をしていたら、人脈もラーメンの詳しい人だけになってしまうし、精神バランスが悪くなる気がします。僕が食べに行こうとしていたお店の記事をほかの人が先に書いてしまって、やっかみが生まれたり。

音楽面でも同じで、大学時代は、音楽で食べていけたらこんなに素晴らしいことはないと思っていました。ミュージシャン志望は、みんなメジャーデビューを目指します。でもメジャーでデビューが叶っても、アルバイト生活から抜けられない人もいるのが現状です。

昔は、サラリーマンミュージシャンなんてカッコ悪いといわれていましたけど、今はメジャーとインディーズの境もなくなりつつあります。ライターでいえば、企業に所属しながらライターとして書いていらっしゃる方もたくさんいますよね。僕は子どもが2人いるので、家庭にお金をしっかり入れつつ、ライブをすればお客さんが来てくださるし、ラーメンの連載も読んでくださる方がいる。本当に好きなことしかしていないのに、幸せなことですよね。ちなみに、僕のライブのMCは見ものですよ。本業の宣伝担当の性なのか、曲と曲の間はしゃべりっぱなしですから。無音がね、耐えられないんです(笑)。

(取材・文:横山由希路 撮影:木村麻希 編集:ノオト)

  • 井手琢人さん

    取材協力者:井手琢人さん

    2017年、株式会社フライヤーに入社。書籍のプロモーションマネージャーとして週5日勤務する傍ら、ラーメンライターとミュージシャンを掛け合わせた「ラーメンミュージシャン 井手隊長」としても活躍する。

  • ライター:横山由希路

    ライター・編集者。エンタメ系情報誌の編集者を経て、フリーに。介護、プロ野球、演劇、台湾などを中心にWEB媒体の執筆、ノンジャンルで書籍編集を行う。

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