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利益第一ではなく「楽しい」を重視ー本格派スパイスカレー「6curry」はメンバー全員が複業だからこそ生まれた

キャリアの多様化により、企業のなかには複業実施の取り組みを始めているところもあり、自社で仕事をするだけにとどまらない、さまざまな働き方が生まれ始めています。

たとえば、ハンディースタイルの本格スパイスカレー専門店「6curry」。「Handy,Healthy」というコンセプトで作られた“インスタ映え”するカップカレーで、UberEATS専門店という「脱実店舗」の形態を採っています。さらに興味深いのは、すべてのメンバーが複業をしながら6curryに携わっていること。なぜ専業ではなく全員が複業なのか、そのメリットは? などの疑問を、メンバー4人に伺いました。

お話を伺った人

  • 五島淳さん

    五島淳さん

    大手広告会社 チーフ・プランナー。入社後、プランナーとしてデジタル領域を専門としつつ、広告主のマーケティング戦略構築、DMP導入運用、キャンペーン企画などを担当。

  • 近藤菜穂子さん

    近藤菜穂子さん

    Septeni Japan株式会社でスマホ広告運用コンサルタント・広告制作ディレクターとして、クライアントのデジタルマーケティングを支援。その後、C CHANNEL株式会社で自社SNSアカウントのユーザー拡大のための施策やアプリのグロースなどを担当。現在は独立してフリーランスとして活動。

  • 新井一平さん

    新井一平さん

    株式会社瞬 代表取締役社長。地域で活躍する「個人」に焦点をあて、食空間とWebを通してその魅力を伝える。主に、食に関わる一次生産者、陶芸家などを中心に発信をしている。また、WEBマーケティングの会社に所属し、ECコンサル、セミナー講師と地域エリアのコミュニティ作りを担当。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    デザイナー。株式会社MTI、面白法人カヤックを経て、株式会社イキモノを設立。2015年4月よりNEWPEACEの立ち上げに参画。2017年8月、れもんらいふ所属。桑田佳祐がらくたツアーパンフレット、上野PARCO_yaグラフィックなどに携わる。

6curryの公式サイトのキャプチャー

メンバー全員が複業をしながらひとつのプロダクトを作る

――昨年末にスタートしたNEWPEACEの新事業「6curry」は、メンバー全員が複業をしながらプロダクトに携わっている珍しいチームです。みなさん普段はどんなお仕事をされているのでしょうか。

  • 五島さん

    五島さん

    広告代理店で、広告やコミュニケーション周りのプランナーとして働いています。デジタル領域のコンサルティング案件を担当することも多く、テクノロジーやデジタル戦略が専門です。

  • 近藤さん

    近藤さん

    フリーランスとしてSNSのコンサルやアプリのマーケティング、デザイン周りなどweb関連のお仕事をしています。もともとは私も代理店勤務でした。

  • 新井さん

    新井さん

    僕は6curry以外だと、3つの所属先があります(笑)。

――えっ(笑) それってパンクしませんか?

  • 新井さん

    新井さん

    どれも自由で、時間もすべて自分で決められるから働きやすいんです。

    ひとつは株式会社瞬という会社の代表取締役。もうひとつはBOLBOPという会社で正社員として働いていて、メインの担当は「技」の伝承プロジェクトについてのコンサルです。

    あとは個人の活動で、自分の名前にちなんだ「一平ちゃんカレー」というプロジェクト。日本全国を回りながら、カレーを通して生産者と食べる人をつなげる試みをしています。

――すごい。YOPPYさんはデザイナーとしてご活躍されていますよね。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    普段はNEWPEACEに在籍していて、6curryがメインの案件ですね。ほかに、株式会社れもんらいふなどでもお仕事をしています。

カレー業界に存在する封建的なものの正体

――みなさんそれぞれ自分の仕事があるなかで、どうして6curryの立ち上げに関わることになったのでしょうか?

  • 五島さん

    五島さん

    この事業自体は、YOPPYが所属しているNEWPEACEという会社のもの。代表である高木新平君は、やりたいことを好きにやるスタンスの人間で、ある日突然「カレーの事業を始めたい」と取り憑かれたように言い始めたんですね(笑)。

――それで、興味を持った人が手を挙げたんですか?

  • 五島さん

    五島さん

    「カレー好きです」みたいな話をしたら、いきなりメッセンジャーでグループが作られ、カレーについてのMTGをしたいので、この日に集合してくださいと。

  • 近藤さん

    近藤さん

    私もそのグループに入っていたのですが、そのとき、自分にとって理想のカレーがなかったので面白そうと思い、参加することにしました。

  • 五島さん

    五島さん

    それで、実際にグループでディスカッションしていると、カレー業界がとても封建的であることがわかってきました。

――というと?

  • 五島さん

    五島さん

    チェーン店だとCoCo壱番屋が一強、パッケージだとハウス食品が一強で、カレー自体の大きな進化が起きていない。

    この現状を切り崩すきっかけを考えた時、インスタ映えするビジュアルにすれば、流行に敏感な女性に支持されるのではないか? という話になりました。そこに、新しい需要がある気がしたのです。

  • 近藤さん

    近藤さん

    サラダ感覚で食べられる、デザイン性の高いカップカレーのような商品は今までありませんでしたしね。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    それで、それぞれの好みに合ったカレーをフランクに提供したいという思いから、酸味や甘味などを6層構造にして、オリジナルのカレーを作ろうという話になりました。

立ち上げのデッドラインは「出産日直前まで」

――実際に立ち上げるまでの流れはどのようなものでしたか?

  • 近藤さん

    近藤さん

    カレー屋さんで「甘口」と書いてあっても「辛口」のものがありますよね。なので、まず「辛さ」を標準化するところから始めました。「一平ちゃんカレー」をみんなで食べながら、辛さのマッピングをしていく作業です。

  • 五島さん

    五島さん

    メンバーの大まかな役割が決まってからはSlackでやり取りをするようになり、「パッケージ」や「デザイン」「PR」などのチャンネルに分かれて、リモートで連絡を取り合うことが増えました。

    実は、スタートからサービス提供まで4カ月で実現できたのですが、これはスケジュールをしっかりと切り、スピード感を意識していたからだと思います。

  • 近藤さん

    近藤さん

    高木さんのパートナーの方が出産直前だったので、「出産日直前までに」と、意図せざる形でデッドラインも決まりました(笑)。

立ち上げのデッドラインは「出産日直前まで」

各々の専門分野を活かしつつカバーし合う関係性

――役割分担はどのようになっているのでしょうか。専門分野を活かしているのか、あるいは関係ないジャンルも手がけるのか、など。

  • 五島さん

    五島さん

    僕は両方だと思っています。それぞれの領域での強みを発揮しつつ、雑用的なことも含め、みんなでできることに取り組んでいく。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    私はデザインを担当しているのですが、まずどんなブランドデザインを作るか、から始まりました。高木が考える6curryのコンセプトを言語化してもらって、実現にはどんなデザインやロゴにしたほうが良いのかを検討。

    パッケージについては女子ウケということで、インスタ映えするビジュアルのほうが広がるよねとなりました。

――そこから、いまの形ができあがっていった、と。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    はい。瓶詰めのような形態で層があって、パフェのように見えるカレーは新しいし、手軽に食べられるのでは? というように、作っていく過程で進化していきました。

    ロゴは当初ポップな感じでしたが、パッケージ自体が特異なデザインなので、なるべくシンプルな形に洗練されていきました。味はもちろんですが、デザインでもマスに届けばいいなと思っています。

  • 近藤さん

    近藤さん

    YOPPYさんがブランドの世界観を考えてくれているので、それに沿って、私と五島さんの2人でSNSで発信するならどういった内容がいいかを考えて投稿しています。

――新井さんは唯一飲食の経験がありますよね、やはり開発の部分でしょうか。

  • 新井さん

    新井さん

    中心は商品開発です。オープンした今でも開発には携わり、私ともう1人、計2名のスタッフでお店のオペレーションをやっていますね。

  • 五島さん

    五島さん

    イベントの時などは商品づくりのお手伝いをしますが、デイリーでは新井さんにお任せしているというのが現状です。

「どんなカレーをお客さんが求めているか」をまず考える

――複業だからこそのメリット、あるいはデメリットについてはいかがでしょう?

  • 五島さん

    五島さん

    大変だったのはやはり時間ですね。昼間にイベントがある際は、もちろんみんな複業なので、どう調整するかが難しい……。

  • 近藤さん

    近藤さん

    私はフリーなので時間に融通が効きますが、進行ペースなどを自分たちで決めないとゆるんでしまうので、意外とそれが大変でした。

  • 新井さん

    新井さん

    僕は副業としての課題はあまり感じていないんですよ

  • 近藤さん

    近藤さん

    そうなんですか?

  • 新井さん

    新井さん

    うん。そもそもカレーは作るも食べるも大好き。その延長線上に6curryの活動があるので、やっていて純粋に楽しいんですね。いろいろ色々な仕事の経験が集まる自由さから生まれるものは、必ずある。

    あえてデメリットを挙げるなら、「どんなカレーをお客さんが求めているか」をまず考えないといけないことかな。考える時間はどうしても必要だから、睡眠時間が少なくなる(苦笑)。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    プロジェクトの進め方として、たとえばデザインだけ、というように一つの能力だけだと何も進まない。みんなが主役として取り組めているこの状況が一番良いと思っています。

    さまざまな場所から受ける刺激で、新しい感情が生まれる。そこからパラレルに企画が派生していくので、専業ではない利点は大きいですね。

  • 五島さん

    五島さん

    あと、現状マネタイズは先の話なので「楽しい」が第一にあることもいいことかな。さまざまな専門分野を持った人たちと、スキルを合わせながらモノを作ることができるのは楽しいですよね。

「どんなカレーをお客さんが求めているか」をまず考える

――もし専業だったら、「楽しい」が第一ではできない部分もありそうですね。

  • 五島さん

    五島さん

    やっぱりもっと稼がなければと考えますよね。それから、少し手堅いパッケージの商品になります。コンビニで扱ってもらえるような。

    利益を出すに越したことはないのですが、そこに縛られないのが長期的にはいいんじゃないかと思っています。

  • 近藤さん

    近藤さん

    利益重視でいけば、必ず妥協するところが出てくると思うんですよ。たとえば、原価が高いから6層を5層に減らそうかとか(笑)。

――今後のマネタイズについてはどう想定されていますか?

  • 五島さん

    五島さん

    今は投資フェーズなので、NEWPEACEの経費の形で運営しています。とはいえ、かなりお金を使わずにできているという自負はある。

    ベンチャーキャピタルから問い合わせはいくつかあるので、うまくできれば高値で事業譲渡しながらも、NEWPEACEが株主として残るなど、さまざまなスキームが考えられます。

カレーの文化を変えるために6curryができること

――最後に、今後の展望をお聞かせいただければと。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    6curryって、私たちにとって大きな挑戦なんです。食べ物のプロダクトをほとんどやったことのない人たちが、試行錯誤して新しいものを作ろうしている。実店鋪を持ちたいという夢もあります。ひとつの理想はBAKEですね。

  • 新井さん

    新井さん

    高木も話していることですが、6curryを国内で広げるのではなく、何百店舗と持つ前に、まず海外だと。1、2年後の展望ですね。

――海外ですと、日本以上に ベジタリアンやヴィーガンというライフスタイルの人たちもいるので、そこに合わせる必要もありそうです。

  • YOPPYさん

    YOPPYさん

    実際にインスタでも、「ヴィーガン用のメニューはないですか」という問い合わせは来るんです。

    サラダ感覚で提供している分、相性はすごく良いと思います。今後メニューがどう増えていくかはまだわからないですが、その時には対応できればなと。

  • 新井さん

    新井さん

    あと、女性向けというターゲットで売れるかといえば、ニューヨークでは難しいんですよ。思ったよりセグメント化されているので。

    どこを狙うのか、それともすべて狙うためにラインナップをそろえるのか、なども考えないといけません。ニューヨークに行くかどうかも決まっていないのですが(笑)。

――6curryをお客さんが自分で作ったりできても、楽しそうですよね。

  • 新井さん

    新井さん

    6curryとしては、提供側と受ける側との壁をできるだけ崩したいと思っているので、形態としては自分で作ってもらっても良いし、サブウェイのように目の前で作る形になっても良いですね。

  • 近藤さん

    近藤さん

    「カレーの文化を変えたい」が念頭にあるので、ブランドとしての価値観を認知してもらえれば、今後は商品の形が変わっていくのもひとつの道としてありえます。

    私たちは売ることだけでなく、6curryとして、カレーのあり方を変えていきたいので。ニューヨークはそのブースターになれば良いなと思っています。

(取材・文:烏丸おいけ 編集:南澤悠佳/ノオト)

  • ライター:烏丸おいけ

    ライター。カルチャー、ライフスタイル、テクノロジーが好き。新書や書籍の構成もしています。 Twitter ID:@oikekarasuma

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