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Freee

「男性が育休を取れる会社」が採用戦略であり、経営戦略にもなる フローレンス橋本吉央さん×freee CTO横路隆による育休パパ対談

「育休を取りたい気持ちはあるけれど、会社の雰囲気的に取りづらい」
「今まで育休を経験した男性社員がいないので、どうすれば取れるのかわからない」

そんな思いを抱えて悶々としている会社員男性は、決して少なくないでしょう。日本の男性の育休取得率は、わずか3.16%(2016年度)。政府はこの数値を2020年までに13%に引き上げるという目標を掲げていますが、現実はまだ到底そこまで追いついていません。

そんな現状の中で、仕事から完全に離れてしまう育休ではなく、育休を取りつつ会社でも働き続ける「半育休」という働き方を選択する人たちもいます。NPO法人フローレンスに勤務する橋本吉央さんは、半育休を実践後、現在は時短勤務を選択している二児のパパです。

「半育休」とはどのような勤務スタイルなのか? 男性が育休を取得することが家庭や組織にどのようないい影響をもたらすのか?

半育休×時短勤務で仕事と子育てを両立中の橋本さんと、第一子の育休から復帰したばかりのfreee CTOの横路隆が、「男が育休を取るべき必然性」について語り合いました。

お話をお聞きした人

  • 橋本吉央さん

    橋本吉央さん

    認定NPO法人フローレンス 働き方革命事業部 システム担当&NEWS編集長。大手金融系システムベンダー勤務を経てフローレンスに入職。現在はコーポレートNEWSの編集長を担当。2014年に第一子が誕生。2017年1月の第二子誕生時には育休しながら働く「半育休」を3カ月半続ける。現在は時短勤務中。

     

    ▼個人ブログ
    パパ半育休からの時短なう

  • 横路隆

    横路隆

    freee株式会社CTO。学生時代よりビジネス向けシステム開発に携わる。大学院修了後、ソニーでデジタルカメラのミドルウェア開発を経て、2012年に共同創業者としてfreee株式会社を起ち上げる。2017年11月に第一子が誕生、1カ月間の育休を取得する。

半育休=通常の育休のオプションを利用した働き方

――まずは、橋本さんが育休を取ろうと決めたきっかけを教えてください。

  • 橋本

    橋本

    僕が育休を取ったのは第二子が生まれたとき、2017年1月です。今、3歳の上の子のときは別の会社にいたんですが、育休が取れなかったんですよ。でもやっぱり育児を妻だけに負わせる状況はよくないなという思いがあったので、今のフローレンスに転職して。だから2人目のときは、最初から育児にコミットしようと決めていました。

  • 横路

    横路

    完全な育休ではなく、「半育休」という形にしたのはなぜだったのでしょう?

  • 橋本

    橋本

    ちょうどオウンドメディアの編集長業務を引き継いだばかりだったので、完全に離れるのは難しい部分があったんですね。

    実は、育休というそもそもの制度自体が、月80時間まで業務をすることが可能なんですよ(※1)。つまり、「半育休」というのは独立した制度ではなく、通常の育休の制度内に含まれるオプションを利用した働き方。それを僕達の職場ではわかりやすい言葉で「半育休」と呼んでいます。

半育休=通常の育休のオプションを利用した働き方

――基本はあくまでも育児で、属人性の高い業務だけを継続して担当する、ということですね。横路さんの場合はどのような育休スタイルでしたか?

  • 横路

    横路

    僕の場合は昨年の11月に初めての子が誕生したんですけど、生後1週間からの1カ月間、完全に育休を取りました。それまでは夫婦共に仕事に全力投球だったんですよ。でも今後、育児を生活にどう組み込んでいくか、その基盤を作りたいなというのがあって。もうひとつ、育児に対して自分でオーナーシップを持つという経験もしたかった。

――創業者として、職場から完全に離れることに不安もあったのでは。

  • 横路

    横路

    いや、今までずっと仕事一筋だったから、棚卸しのいいタイミングだと思ったんですよ。この機会に自分の仕事をみんなに任せて、自分が1カ月いなかったらどうなるのか、何が起きるのかも見たかった(笑)。でもいざ育休に入ったら、産後2週間後に妻が大量出血をして、1週間の入院になってしまったんですね。

  • 橋本

    橋本

    それは大変でしたね。産褥期(さんじょくき)は、ただでさえ母体の変化が著しい回復期なのに。

  • 横路

    横路

    それで生後2週間の赤ん坊を突然、僕ひとりで育てることになってしまって、なかなか大変でしたね。ただ、結果的にその期間、自分がオーナーになって全部回し切る経験をしたことはすごく自信になりました。そこをやり遂げたことで妻の信頼も得られたかな、と。産後クライシスって言葉もありますけど、産後は夫婦の信頼関係が壊れやすい時期だともよく聞いていましたから。

――実際に育休を取ってみて、どんなところが大変だと感じましたか。

  • 橋本

    橋本

    妻が2人目を産んだ直後はやっぱり結構大変でしたね。上の子と2人の生活でずっと家事・育児を回しつつ、保育園に連れて行くんですけど、コミュニケーションがうまくいかないとすぐスケジュールがずれるし、そうなったときに誰もほかにリカバリーしてくれる人がいない。そういう苦労はありましたね。

  • 横路

    横路

    簡単にオーバーヒートしますよね? 僕は生活の基盤を作っていくためには、大事にしたいところ以外は全部アウトソースしようと早い段階で決めました。自治体の子育て支援、洗濯乾燥機、ルンバ、スマートスピーカーといった文明の利器もフルに導入して。

  • 橋本

    橋本

    うちもスマートスピーカーを使ってます。触れなくても操作できるのが便利ですよね。料理をするときもタイマーを複数かけられたりするのがいい。

  • 横路

    横路

    そうそう。新生児の場合は、授乳が頻繁じゃないですか。それを記録するためのスマホアプリもあるんですけど、だいたい手が塞がっているからいちいち記録しづらい。でもスマートスピーカーはサービスを組み合わせれば口で言うだけで記録したり次の授乳のタイマーかけたりとサポートしてくれるから、すごい便利ですよね。

――育休復帰後の現在は、どんな風に働いていますか。

  • 橋本

    橋本

    僕は時短勤務で夕方早めに帰るようにしています。わが家は妻がまだ育休中で4月から復帰できたらと思っているんですけども、上の子をお迎えに行って下の子の面倒を見つつ夕食の用意をして……というのを全部一人でやるのはかなりハードルが高い。下の子が保育園に入って生活サイクルが固まるまでは、今の時短スタイルを続けていくつもりです。

  • 横路

    横路

    僕の場合も、早めに出社して18時には時間厳守で帰るのが基本です。子どもをお風呂に入れたいので。ただ、freeeでは家庭の状況に合わせて出退勤の時間を調整することが当たり前なので、特に違和感はないですね。

  • 橋本

    橋本

    僕は育休を取ったおかげで、子どもと触れ合う時間がすごく長くなったんです。3歳の上の子とも、しっかり向き合ってあげることができた。それが一番うれしいことでしたね。

育児も仕事も「障害対応」をデフォルトに考える

  • 横路

    横路

    僕はもともとエンジニアであることもあって、障害が起きることを想定して業務を組み立てるんですけど、育児ってそれと一緒だなって最近感じています。

  • 橋本

    橋本

    ああ、わかります。僕の前職はIT系の会社だったんですが、そういった障害を想定した体制という考え方があまりなかったんですよ。障害が起きたら、とりあえずみんな夜遅くまで残って対応しよう、みたいな雰囲気で。そういう職場で仕事と子育てを両立するのは厳しい。だから転職を決めたのですが、これからの時代、そういった組織の体制づくりはすごく大事だなと思います。

  • 横路

    横路

    橋本さんのように「育休がきちんと取れるか」「ライフイベントに応じて働ける会社か」という判断基準で転職する人は、今後どんどん増えていくはずです。会社内でもそうだし、家庭内でも妻に何かあったときは、僕が家事育児を全部引き取れるくらいでないと立ち行かなくなる。会社と家庭、それぞれの障害対応を二段構えにしていかないと。

  • 橋本

    橋本

    共働きだからこそ、お互いさまになりますよね。ワーク・ライフ・バランスって福利厚生の側面で語られることが多いのですが、今の若い世代では男性が育児をすることは当たり前になりつつある。そうなっていくと「男性でも育休を取れる会社」ということが採用戦略であり、経営戦略になる。そこを理解しておかないと、これからは人が採れない時代になると思います。

育児も仕事も「障害対応」をデフォルトに考える

――男性が育休を取得できることは法律でも認められています。にも関わらず、お2人のように実際に育休を取る男性はまだまだ少数派なのは何が原因だと思いますか。

  • 橋本

    橋本

    制度上では男性も女性と同じように育休を取れるはずなんです。妻が専業主婦の夫でも、育休は取れる。制度はあるのに、運用がされていないんですね。なぜか、それは組織風土なんですね。中間管理職の層がまだ性別役割分業の古い意識を引きずっているから、下の世代が自分から声を挙げづらい。

  • 横路

    横路

    同感です。だから制度そのものよりも、社内の雰囲気作りのほうが圧倒的に重要だなと僕は思っていて。freeeは毎月1人は社員が育休に入るのですが(注:直近半年の実績)、「freeeにいるなら育休取ろうか」という空気がある。制度を指標にするよりも、そういう空気をつくるほうが絶対に大事。

  • 橋本

    橋本

    トップが取ると下も取りやすいですよね。フローレンスの代表の駒崎も2カ月くらい育休を取っていましたし、第二子ができたことを報告すると「育休取るよね」と自然な流れで聞かれましたから。それで僕も半育休という選択をできましたし、うちも今のところ男性社員の育休取得率は100%です。

――フローレンスとfreee、それぞれの会社で雰囲気づくりのために何か実践していることはありますか。

  • 橋本

    橋本

    年に1度、社員の家族同士で集まるファミリーデーを設けています。あとは有志でイベントを企画して家族ぐるみで遊んだり。そういうリアルで触れ合う場があると「○○さんの子ども」じゃなくて「○○さんの娘の▲▲ちゃん」という意識に変わるんですよ。社員全体で一人ひとりの子どもたちをケアしてる、という雰囲気はあると思います。

  • 横路

    横路

    顔が見えるって大事ですよね。うちには「つばめっ子クラブ」っていう子育て中の親たちのコミュニティがあるのですが、そこの SNS のチャンネルではお下がりのやり取りや、子育ての悩み相談の話題が飛び交います。土日に定期的な交流会もしていますし、子どもが誕生したらfreeeのオリジナルデザインのロンパースも贈っています。

男の育休を組織が“今”、インストールすべき必然性

  • 横路

    横路

    今の日本の深刻な労働力不足を考えると、僕はもう待ったなしのところまで来ていると思う。僕たちの会社は「ITの力で人々の生産性を上げる」という趣旨のビジョンを掲げているのですが、その前提である働く人たちの労働環境をサポートして、労働力を増やすことに注力していかないと、今後はおそらく会社として成り立っていかなくなるでしょう。性別問わず、ライフイベントに左右されない多様な働き方ができるようにサポートしていく。それが5年後には経営判断として当たり前になってくるでしょうね。

  • 橋本

    橋本

    今は「育児」がフォーカスされていますけど、近いうちに「介護」の問題も絶対出てきますよね。介護のために会社を休まなきゃ、辞めなきゃいけないとなる前に、「育休」を通して働きやすい組織というものをインストールしていたほうが絶対にいい。企業としてもそのほうが確実にメリットがあると思います。

(取材・文:阿部花恵 編集:南澤悠佳/ノオト)

(※1)半育休は「月80時間までの業務であれば、育児休業給付金が給付される」という通常の育児休業の制度内のオプションを利用した働き方・休み方です。男女ともに利用できますが、現行の制度では突発的・属人的な業務しかできないという制約があるため、取得を申請する際は事前に人事や社労士と確認を取ってください。

  • ライター:阿部花恵

    編集者・ライター。働き方、ライフスタイル、差別、ジェンダーなどを中心に執筆・編集を行う。編集担当の近著は『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(石川善樹、吉田尚記/KADOKAWA)。