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「銭湯には人を救う力がある」 高円寺・小杉湯の三代目が提案する、銭湯×働き方

昭和8年創業、高円寺で85年続く小杉湯。三代目店主の平松佑介さんは、地元住民や銭湯好きの人々を巻き込んで、さまざまなプロジェクトを生み出しています。

「斜陽産業と言われる銭湯ですが、やり方次第で可能性は十分にあると思っています」と確信する平松さんと、週一で銭湯に通うほどお風呂好きのfreeeお風呂部・徳永大我が、銭湯の魅力や多様な活用法について熱く語り合いました。

お話を伺った人

  • 平松佑介さん

    平松佑介さん

    住宅メーカー、ベンチャー起業を経て、2016年10月10日「銭湯の日」より小杉湯三代目に就任。小杉湯が150年、200年と続いていくためのプロジェクト「銭湯ぐらし」を立ち上げ、新たな銭湯文化を創るべく奮闘中。

  • 徳永大我

    徳永大我

    freee株式会社 スモールビジネス事業部 カスタマーサクセスマネジメント所属。
    全てのスモールビジネスユーザーの成功を支援するため己を日々更新中。
    音楽・サッカー・お風呂・猫好きの感覚肌。副業でDJを18年。

若い世代が増えている「銭湯のある暮らし」

――銭湯は年配の方が多く利用するというイメージが強かったのですが、最近では若い世代のファンも増えてきているように感じます。小杉湯にはどんな方々が訪れますか?

  • 平松さん

    平松さん

    平日は300〜400名、土日は約500名のお客さんが来てくださいます。そのうちの3割、多い時は4割が20代〜30代の方々です。近隣の方はもちろん、遠方から足を運んでくださる方も多いですね。

  • 徳永

    徳永

    週一ペースで銭湯通いしている私も、小杉湯さんの利用者数と若者の多さには驚きました。

  • 平松さん

    平松さん

    年配の方々は家にお風呂がなかった時代からの常連さんだったりしますが、若い世代の徳永さんが銭湯に行かれる理由ってなんですか?

  • 徳永

    徳永

    今は「体を整える」というのが一番ですね。二日酔いで体調が悪かったり、仕事が忙しく疲れていたりする時こそ、銭湯を活用しています。私は小さい頃から銭湯が身近にある環境で育ったので、銭湯のある暮らしがすでにライフスタイルとして定着しています。

  • 平松さん

    平松さん

    「整える」ために来る人は多いですよね。現在、銭湯を利用する理由として「働き方」的な視点と「レジャー」的な視点の2つがあると感じています。若い世代は5人以上の大人数で来ることもあるんですよ。カラオケやテーマパークに行くのと同レベルのレジャー感覚に近いのかもしれません。

    そして、整えるというのは働き方の視点ですね。熱い風呂と水風呂に交互に入る(温冷交互浴)ことで、交感神経と副交感神経の切り替えが整うと言われています。スポーツの世界では、昔から取り入れられてきた疲労回復方法なんです。

  • 徳永

    徳永

    交互浴は私も実践しています。家でお風呂につかった後に冷たいシャワーを浴びるのとは全然違うんですよね。水風呂に入ると全身をぎゅっと締められているような感覚があって、これは銭湯でないと味わえません。銭湯に行くと交互浴を4〜5回繰り返しますけど、毎回心身が整うことを実感しています。

若い世代が増えている「銭湯のある暮らし」

「銭湯×音楽」「銭湯×アート」 掛け算で化学反応を起こす

――レジャー感覚で銭湯を選ぶというのは面白い考え方ですね。小杉湯では、「銭湯ぐらし」プロジェクトとして、若手クリエイターたちとコラボしたイベントの開催も行なっています。そのユニークさも若い世代に支持される理由かと思います。

  • 平松さん

    平松さん

    そうかもしれませんね。開店前の休眠資産を活用して、ヨガやピラティス教室、トークイベント、音楽フェスなどコミュニティーの場として使っています。

  • 徳永

    徳永

    アイデアは平松さんが考えられているんですか?

  • 平松さん

    平松さん

    僕発信もありますけど、常連のお客さんや地域の方々からの提案が多いですね。あと、銭湯の数が減っている現状で何か力になりたいと考えてくれる若者もいます。実は銭湯って、アートや音楽と掛け合わせることで化学反応を起こしやすい場所なんです。音楽イベントをクラブで開催するのと銭湯でやるのでは、注目度が違うでしょう?

  • 徳永

    徳永

    意外性、ギャップは大事ですよね。

  • 平松さん

    平松さん

    そうそう、銭湯はギャップを生み出しやすいんです。しかも小杉湯は築85年で、昔ながらの建築様式がそのまま残っている。拠点となる小杉湯自体が注目されやすいというのも、発信基地として大きな武器なんです。高円寺でこの建物を守りながら銭湯を続け、それを次の世代に継承することが、三代目としての僕の重要な役割だと思っています。

「銭湯×音楽」「銭湯×アート」 掛け算で化学反応を起こす
  • 徳永

    徳永

    建物、素晴らしいですよね。天井が高いので音楽を流したらいい感じに響きそう。私は副業でDJをやっているんですけど、地域のローカルDJを交えたりすればおもしろいことができそうです。

  • 平松さん

    平松さん

    まさに徳永さんのように、銭湯に通い続けてくださっているお客さんがアイデアを提案してくださる。僕には出てこない発想です。そういう声にきちんと耳を傾けて、みなさんの力を借りながら形にしていきたい。ここを利用して、いろいろな人がどんどん自分のやりたいことに挑戦してほしいし、それが小杉湯や高円寺の活性につながっていくと思っています。徳永さんも、何かコラボしましょうよ。

  • 徳永

    徳永

    いいですね! こういったイベントは、銭湯に馴染みのない人が銭湯に触れるいいアクションにもなりますよね。来たことがない人にとって、銭湯は意外にハードルが高いと思います。入り方もわからないし、外から見えないから中の雰囲気もわからないし。

  • 平松さん

    平松さん

    イベントに参加してもらうことで、今度は銭湯に来てみようと思ってもらえたらうれしいですね。

「デジタルデトックス」で、頭の中に余白を作る

  • 平松さん

    平松さん

    レジャーという新たな利用方法が出てきたこともあって、ちょっとした銭湯ブームになっていますが、一時的なものではなく文化として根づかせていかないとダメだと思っています。僕は「働き方」と銭湯は相性がいいと感じているんです。銭湯のある暮らしは、最終的に仕事の生産性を上げることに繋がるんじゃないかと。

    いつでもどこにいてもスマホを手放せず、常に頭がインターネットに接続されている環境は、ワークライフバランスの境界線をどんどん曖昧にしていきます。頭の切り替えが難しくなってくる。銭湯は唯一、スマホ=情報から離れられる場所なんです。そういう空間は今、非常に少ないですよね。

  • 徳永

    徳永

    たしかに、公共の場である銭湯では、マナーとしてスマホは持ち込まないですからね。でも、自宅だと風呂に入る時でさえスマホを手放せない人もいます。

  • 平松さん

    平松さん

    自宅の風呂とは違い、銭湯は無理やりデジタルから切り離されますよね。だから、環境的に「デジタルデトックス」ができる。銭湯は情報量を整理し、詰め込みすぎたハードディスクの容量を減らして、頭の中に余白を作る場なんだと感じています。

「デジタルデトックス」で、頭の中に余白を作る
  • 徳永

    徳永

    私は個人の視点だけでなく、コミュニケーションの場としてもそれを実感しています。会社の仲間と一緒に銭湯に来ると、外界からの情報が入ってこない時間と空間だからこそ、なんでも話せるというか。裸のつき合いということも併せて、お酒の場よりも腹を割って話せる気がします。連帯感やチーム感が生まれやすい環境ですよね。

  • 平松さん

    平松さん

    それはすごく効果があると思います。お風呂は1日の最後に入るものというのが一般的な概念でしたが、家族や友人、仕事仲間とのコミュニケーションの場という側面も持っている。もっと多くの人々に、そういった銭湯のあるライフスタイルや銭湯のある働き方を知ってほしいですね。

  • 徳永

    徳永

    飲み会の前に「まず風呂だね」という(笑)。

  • 平松さん

    平松さん

    そうそう(笑)。いきなり飲み屋に行くよりも銭湯に行ってからのほうが、よりコミュニケーションがとりやすくなることをぜひ実感してほしいですね。今後さらにデジタル化が進み、パラレルキャリアをする方も間違いなく増えていくと思います。そうなると、ますますオンオフの切り替えや、頭に余白を作るという作業が難しくなっていく。銭湯がその役割を果たせると僕は確信しています。

銭湯には癒し効果以上の「人を救う力」がある

――多忙な日々を送るビジネスパーソンにこそ、銭湯が必要なのですね。平松さんは小杉湯の三代目として働き始めて1年半ほど経ちますが、どういった反響がありますか?

  • 平松さん

    平松さん

    若いお客さんで「銭湯に救われた」と言ってくれる人が多かったことは驚きました。癒し効果があるとは思っていたけど、それ以上に人を救えるんだと、銭湯にそこまでの力があることを知りました。

  • 徳永

    徳永

    何者かはわからないけど、いつも挨拶をするおじさんやおばさんがいて、いつの間にか繋がりができてくる。そういうふれあいみたいなものに救われるんでしょうね。

  • 平松さん

    平松さん

    仕事ではもちろん、SNSでも常に自分の名前と肩書きはセットになっていて、自分が何者なのかをきちんと示さないといけない。でも、銭湯では自分が何者なのかは関係なくコミュニケーションが成立します。少々大袈裟な言い方かもしれないけれど、自分は生きていていいんだと実感できるのかもしれないですね。

  • 徳永

    徳永

    毎回通っていると、いつも行く時間にいつも同じおじさんがいて、銭湯は地域コミュニティーが生まれる場だと感じます。

  • 平松さん

    平松さん

    一般的な町おこしのように、新たに「地域のコミュニティーの場を作りましょう」というのではなく、すでに地域とのコミュニティーが成立しているのが銭湯ですからね。そういう意味でも銭湯は貴重な場だと思います。

銭湯には癒し効果以上の「人を救う力」がある

――今後、「銭湯ぐらし」プロジェクトをより活性化させるための新たな取り組みはありますか?

  • 平松さん

    平松さん

    小杉湯の隣に、暮らしや働き方と銭湯を近づけるための新しい施設を作る計画を立てています。例えばコワーキングスペースを作って、仕事の合間に銭湯に入り、頭に余白を作ったり気分転換したりする場として、また家族や仕事仲間とコミュニケーションをとる場として活用してもらう、みたいな。

  • 徳永

    徳永

    いいですね。そんな場所ができたら、お風呂好きの私にとっては夢のような働き方ができます。ぜひ、実現させてください。

    我々の仕事は面倒臭い経理作業を楽にし、本業にフォーカスしてもらうということ。頭の中に余白を作るという平松さんの考えと共通しています。形は違えど、スモールビジネスが元気になる日本を目指しましょう。

(取材・文:塚本佳子 編集:阿部綾奈/ノオト)

  • ライター:塚本佳子

    ジャンルを問わず、幅広い分野で執筆活動を行なっている。週末のみ自宅ショップ「Fika」店主。『著書は『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、『Fika』(Pヴァイン)などがある。

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