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日本でパラキャリは浸透するか? 現状打破に必要なことを元Google人事ピョートルさん×元リクルートキャリアのドリーさんに直撃!

パラレルキャリアという言葉が浸透しつつあるなか、まだまだ副業を認める企業は少数派。日本人のこれまでの働き方と照らし合わせれば、本当の意味でパラレルキャリアが市民権を得るには、まだいくつかの障壁がありそうです。

そこで、HRテックサービスを提供するモティファイ株式会社から、ピョートル・フェリクス・グジバチさん(以下、ピョートル)と、ドレ・グスタボさん(以下、ドリー)のお2人にご登場いただき、海外の事情を踏まえながら現状の課題をあぶり出してもらいました。

お話をお聞きした人

  • ピョートル・フェリクス・グジバチさん

    ピョートル・フェリクス・グジバチさん

    モティファイ株式会社 取締役 Chief HR Scientist / プロノイアグループ株式会社 代表取締役。ポーランド出身。2000年に来日し、06年からモルガン・スタンレーでラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデントを、11年からグーグルでアジアパシフィックでのピープルディベロップメントを務めるなど、多彩なキャリアを経て現職に。

  • ドレ・グスタボさん

    ドレ・グスタボさん

    モティファイ株式会社 代表取締役 CEO。ブラジル出身。慶應義塾大学大学院でメディアデザイン研究科を修了した後、ソニーやリクルートに勤務し、日本のHR事情に精通。現在は「働きがい・社員育成」を切り口としたオンラインプラットフォームとアプリを開発している。

日本人の勤勉性が現在のビジネスシーンに合わないことも?

――まず、お2人は日本人の仕事観や働き方について、どのような感想をお持ちですか?

  • ドリー

    ドリー

    国民性を指標化した「ホフステッド指標」の中に、各国の仕事スタイルを比較したスコアがあるんです。それによると、他国と比べて日本人は、家庭より仕事を大切にする傾向が強いのは間違いなさそうです。

  • ピョートル

    ピョートル

    よく指摘される日本人の勤勉性については、まずそれが現在のビジネスシーンに必要であるかどうかを考えるべきだと思います。以前のような製造業主体の時代であれば、勤勉で忠誠心の強い人材にニーズが集まったのもうなずけますが、ナレッジエコノミー(知識経済)主体に移行しつつある昨今に求められるのは、専門性や創造力であるはず。その点、日本人は仕事に効率を求めるスタンスに欠けているのは事実でしょう。

  • ドリー

    ドリー

    そうですよね。海外のビジネスパーソンは、もっと仕事に合理性を求めますから。

  • ピョートル

    ピョートル

    実際、平均生産性を比較してみると、日本人のそれはノルウェー人の半分程度なんですよ。ノルウェー人は1時間あたりおよそ78ドル稼ぐのに対し、日本人は41ドル程度。これはあまり働き者のイメージがないイタリア人やスペイン人よりも低い数字なんです。

日本人の勤勉性が現在のビジネスシーンに合わないことも?

――それは意外な事実。シエスタを取ってのんびり働いている印象のスペイン人より生産性が低いとは……。

  • ドリー

    ドリー

    日本の人材が真面目さにおいて突出しているのは間違いないと思います。ただ、おかげでちょっと考え方が固すぎて、柔軟性に乏しい印象を受けます。

  • ピョートル

    ピョートル

    古来の文化やしきたりを大切にしているからこそ、効率面で損をしている部分はあるでしょう。たとえば、多くの企業がいまだに紙の書類に印鑑を押すような作業から脱却できずにいるのもその1つ。

    昨日も銀行である手続きをしようとしていたら、同じような書類を何枚も書かされ、無駄に時間をロスして辟易したところですよ。データはすべて銀行側が持っているはずなのに、なぜこの作業が必要なのか、はなはだ疑問でした。

  • ドリー

    ドリー

    ああ、よくわかります。名前と住所を何度も何度も書かされるのは、どう考えても無意味ですよね。これは日本ならではかも。

  • ピョートル

    ピョートル

    ただ、日本人ならではの長所もたくさんあると思います。「おもてなし」の精神などはその最たるものでしょう。これにこだわるあまり、時間あたりの生産性が落ちるのはやむを得ないことかもしれません。

パラキャリが自分の市場価値を上げる手段に

――お2人の言葉からすると、日本人の働き方には良くも悪くも強い保守性を感じさせますね。

  • ピョートル

    ピョートル

    そうですね。日本の人材の多くが、できるだけ有名な企業に入りたい、大きな企業に入りたいという意志を持っているのも、そのためでしょう。Googleが行なっている採用マーケティングによると、就活中の学生の多くが、大手企業名に「働きやすさ」や「人材育成」といったキーワードをプラスして検索していることがわかっています。つまり、ほとんどの人が仕事領域ではなく、企業名から就職先を探しているんですよ。

  • ドリー

    ドリー

    これは「何がやりたいのか」ではなく、「どこに入りたいか」と考える人が多いことを意味しています。欧米ではあまり見られない傾向ですよね。

  • ピョートル

    ピョートル

    そう。つまり自己認識が足りていない証しです。本来はもっと、「IT企業+人事」「製造業+マーケティング」などと、どういう会社でどのような仕事をしたいかにフォーカスすべきなのに。

  • ドリー

    ドリー

    我々が某大手企業で人材研修を請け負った際、各自にキャリアを振り返って文章を書かせるカリキュラムを提案したところ、「それは嫌がられるのでやめましょう」と拒否されたことがありました。要は、自分自身を見つめ直す作業に不慣れで、非効率だというのです。これでは自己認識なんて、できるわけがありません。

――そうした保守的な土壌が目立つ一方で、最近になってパラレルキャリアという働き方が少しずつ広まっていることを思えば、少しずつ日本人の意識も変わりつつあるのでは?

  • ピョートル

    ピョートル

    それは同感です。ここへ来て、経産省などの後押しもあり、急速に状況は変わりつつあると思いますよ。

  • ドリー

    ドリー

    これまでは会社を辞めて新しいことを始めようと思ったら、それまで享受していた保障をいったん放棄しなければならず、マインドセットを大きく変える必要がありました。つまり、保守的な人は新しい仕事になかなか手を出せない状況だったわけですが、それでも最近は、保障を得つつも新しいことに挑戦する人が増えているように感じます。僕の昔の同僚にも、会社に所属したまま美容サロンを始めた人がいますが、こういうのは非常にいいことだと思います。

  • ピョートル

    ピョートル

    保障とひとくちにいっても、もし会社の保障だけに頼っていると、会社が倒産した時に路頭に迷うことになってしまいます。そうならないためには、個人の保障を強めることが重要でしょう。すなわち、自身の市場価値を高める努力を怠らず、個人で自分の身を守ることです。自分の特技や趣味を副業などで生かそうというのは、立派なその手段の1つと言えますね。

――しかし、仕事につながる特技が見出だせない人も多いと思います。

  • ドリー

    ドリー

    それもアイデアや行動力次第なんですよ。特に最近は、新たなことを学ぶコストが、非常に安くなっていますからね。ちょっとネット上を探してみれば、月額1000円程度でウェブ制作のスキルが身につけられるコンテンツだってあるんですよ。パラレルキャリアではなくても、現状の給料にプラスオンを求めるなら、こうしたサービスを活用してスキルを加えていく努力をすべきでしょう。

  • ピョートル

    ピョートル

    それに都内では、さまざまな勉強会もたくさん開かれています。今の仕事をしながら見識を広めることは、十分に可能だと思いますよ。ほかのビジネスパーソンが何をやろうとしているのか、パラレルキャリアにはどのような選択肢があるのかを知るには、外へ出なければ始まりません。

  • ドリー

    ドリー

    少し視点を変えてみれば、今の日本では安全に挑戦することができるし、そのための準備もできるんですよ。ただ、それに気づいていない人が多いだけなんです。

  • ピョートル

    ピョートル

    日本のビジネスパーソンに総じて感じるのは、目の前のタスクにばかり意識が集中しがちであることです。その仕事をどう処理するか、何時までに終わらせるためにはどうすればいいか、と。でも、生産性は長期と短期で考えなければなりません。そして、長期的な生産性を上げるためには、自身のスキルセットをアップデートすることが不可欠です。

パラレルキャリアは仕事を通した自己実現の手段

――ちなみに、モティファイ社内ではパラレルキャリアは認められていますか?

  • ドリー

    ドリー

    もちろんです。実際に数名そういう人材がいますよ。我々としては、そのもう1つの仕事で得たネットワークやナレッジを、早くうちの会社とつなげてほしいと望んでいます。

  • ピョートル

    ピョートル

    パラレルキャリアを認める会社側のメリットとして、それまでにはあり得ないようなビジネスチャンスが生まれる可能性が挙げられます。それは人脈でもノウハウでも何でもいいわけです。

――また、パラレルキャリアの浸透によって、個々のプレイヤーのスキルセットが上がる効果も期待できそうですね。

  • ピョートル

    ピョートル

    その通りです。そのあたりは北欧が特に進んでいて、スウェーデンやノルウェーあたりでは、最低賃金が日本円にして2500円程度という水準が当たり前になっています。それ以下の仕事は海外にアウトソースしようという考え方が浸透しているんです。

  • ドリー

    ドリー

    これには国内に東京ほどのマーケットがないことも影響しているでしょうね。自分の国にそもそも売る先がないから、海外展開が発想しやすいというか。

  • ピョートル

    ピョートル

    わかりやすい事例が、デンマーク発のチェーンストア「フライングタイガー」でしょう。フライングタイガーは「Design in Denmark」に徹していて、デンマークのデザイナーを使って中国で製造する、スピード効率重視のモデルです。ブランド性だけで高い付加価値を伝えられるという、いい見本ですよね。

  • ドリー

    ドリー

    同様の可能性を秘めた日本企業は少なくないと思います。パラレルキャリアを望む人はまず、自分がどのようなライフスタイルを求めているのかを考えて、その上で理想の働き方を、そしてそのために必要なスキルを検討するべきなのでしょう。それを実現できるだけの環境は整いつつあります。

  • ピョートル

    ピョートル

    少なくとも、パラレルキャリアが仕事を通した自己実現の手段になり得るのは、間違いのない事実です。今はまだ、そのために必要な振り返りの機会、たとえばキャリアの棚卸しなどが不足しているように見えますが、着実に働き方改革は進んでいますから、向こう2~3年で状況は大きく変わるのではないでしょうか。

――なるほど。日本のビジネスパーソンにとって、今後の大きなヒントとなるお言葉です。本日はありがとうございました。

(取材・文:友清哲 編集:ノオト)

  • ライター:友清哲

    フリーライター&編集者。主な著書に『日本クラフトビール紀行』『物語で知る日本酒と酒蔵』(ともにイースト・プレス)。『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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