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昼はオイシックス・ラ・大地社員、夜は日本酒バーの女将 元ミス日本酒・小川佐智江さんの「好き」を突き詰めた働き方

過去2年間で2度の経営統合を果たし、2018年からは「オイシックスドット大地」から「オイシックス・ラ・大地」と社名を変更。ここ数年で社内の人材の多様化がますます進んだという同社は、社員の副業・兼業容認にもいち早く舵を切ったパイオニア企業でもあります。

オイシックス・ラ・大地では、性別・年齢を問わず多くの社員が本業とは別の仕事を抱えています。代表自らが率先して一般社団法人を設立しているほか、マーケティング事業部の責任者が別のマーケティング会社の代表を務めていたり、デザイナーが他社のブランド立ち上げプロジェクトに参画したりするなど、その活動はさまざま。副業OKの方針をオープンにしたことで、優秀な人材が集まりやすくなり、社員自身のスキル成長にも繋がっているといいます。

そんな中でもとりわけユニークな兼業スタイルを実践しているのが、入社3年目の小川佐智江さん。元「ミス日本酒」という経歴を持ち、入社とほぼ同時期に日本酒の会社を立ち上げたという小川さんに、現在のキャリアについてお話を伺いました。

普段は人事部でフルタイム勤務、空いた時間でバー運営

――まずは小川さんの現在の仕事について教えてください。

人材企画本部という部署でフルタイム勤務をしながら、夜の空いた時間や休日などに「MYSH sake bar」という日本酒バーの運営に携わっています。先日オープン1周年を迎えたばかりの小さなお店です。

毎週土曜は午後3時にお店に行って開店の準備をして、営業中は女将として食事の提供やお酒の説明をしながら、午後11時のクローズまでほぼまるっと受け持ちます。

――今のような兼業の形を選んだ理由は?

もともと日本酒が大好きで、日本酒に関わる仕事をしたいという気持ちがずっと強かったんですね。2015年には、国内外で日本酒と日本文化のPR活動に取り組む「ミス日本酒」のグランプリに選ばれました。それも、「日本酒を飲むことが仕事になったら最高だろうな」という単純な考えが応募のきっかけでしたね(笑)。

――見事、「ミス日本酒2015」に選ばれた後は、どのような活動をされたのでしょう。

海外10カ国をまわりながら、日本酒の魅力を現地の人々に伝える仕事をさせていただきました。日本酒の魅力って味だけじゃなくて、生産者である蔵元さんの魅力、クラフトマンシップも含めてのものだと思うんです。自分を通してそういった文化、こだわりを発信できることはとてもやりがいがありました。

ミス日本酒の任期を終えた後も、「日本酒に関わることを必ず続けていこう」と決めていたんです。一方で、当時はまだ20代でしたし、社会人としての成長の場として考えたときに日本酒以外の世界、可能性も見ておきたいという思いもありました。

お金だけが目的だったら、きっと消耗していた

――「本業」としてオイシックス・ラ・大地を選んだ動機は?

大学で栄養学を専攻していて、食全般にまつわることに興味があったというのが大きいですね。また、社員全員が副業・兼業できるというのも大きな魅力でした。入社する前から「私は兼業します」という姿勢を明らかにしていましたから。

オイシックス・ラ・大地への入社と日本酒会社立ち上げは、ほぼ同時期なんです。今思えばちょっとはタイミングをずらせばよかったんですけど(笑)。人事の仕事に携わるのも会社を立ち上げることも、どちらも初めてのチャレンジでしたから。

最初の1年は平日の夜も土日も、空いた時間はほぼ兼業のほうにかかりきりでした。でも、好きなことをやっているのでそれ自体は苦ではなかったんです。もし、これがお金目的の兼業だったら消耗していたんでしょうけどね。今、日本酒バーのほうは給与形態としてはパートタイマーの形で働いています。

――オイシックス・ラ・大地の社員が副業を続けていくにあたって、会社や上司に報告をする義務などはあるのでしょうか?

当社が認める副業・兼業の条件は、「本業によい影響を与えるもの」。つまり、スキルや人脈、ネットワークが本業にもよい影響を及ぼすものであるかが重要です。「副業と本業のバランスが取れているか」「本業のミッションにコミットできているか」などについて、所属部署の上司と3ヶ月に1回くらいのペースで面談をして、状況を確認しています。それが自分自身にとっての振り返り作業にもなっていますね。人事の仕事と日本酒バーの仕事、それぞれのどういうところがどんな風に役立っているか、と見直す機会になりますから。

――オイシックス・ラ・大地が副業・兼業OKの方針を打ち出してから4年が過ぎた今、人事担当者としては社内に変化があったと感じていますか?

社員一人ひとりに「多様性がある」ことが社としての大前提になってきた気がします。ひとつの部署に副業を持つメンバーもいれば、産休・育休から復帰したばかりのメンバーもいる。年代も事情もバックグラウンドもそれぞれに違って当たり前だという意識が社全体に浸透してきたと感じています。

それぞれの場で培ったスキルが、双方にいい影響を与える

――日本酒バーの運営はどんなメンバーで行なっているのでしょうか?

今はスタッフが13名いるんですが、ほぼ全員が副業なんです。みんな何かしらの本業を持ちつつ日本酒バーも手伝っている。そういうメンバーがやる気を持って携われる環境をつくろうと思ったときに、人事で培った視点が役立つ場面も多々あります。

逆に、日本酒バーではお客さまとのコミュニケーション力が求められるので、そこで鍛えられたスキルやお客さま目線が、人と携わる人事の場で活きることもある。両方にいい影響は出ているかな、と思います。

――お店のスタッフとのコミュニケーションはどんな風にとっていますか?

お客さまの予約はGoogleカレンダーで管理して、スタッフ間のコミュニケーションはLINEとSlackですね。「#メニュー」「#日報」「#ドリンク在庫」のように業務を項目別にチャンネルに分けて。Slackはオイシックス・ラ・大地でもエンジニアとのコミュニケーションでよく使っているので慣れています。

――「好きなこと」の延長線上で始めた日本酒バーのお仕事ですが、つらさを感じることはありますか?

つらいことも葛藤も、めっちゃあります! やりたいことを始めたはずなのに、理想通りにはなかなかうまくいかないですし、本業が忙しくなるとスタッフとうまくコミュニケーションがとれなくなってお互いフラストレーションがたまるし、代表とはしょっちゅうケンカしますし……。「もうやめよ!」と思ったことも何度もあります。

でもやっぱり好きなことなので楽しいんですよね。オイシックス・ラ・大地の社員がうちのお店に飲みに来てくれることもたびたびあるのですが、店で働いている私を見て「楽しそうだね!」とよく言ってくれます。

お店の規模はまだ小さいですし、メンバーそれぞれが違う動機や思いを持って参画している中で、一致団結することってやっぱり難しいのかな、と思うこともあります。でもそんな中でも、どうやったらモチベーションを高く保てるか、同じ目標に向かって一緒に進んでいけるかについては、今後も考えながら試行錯誤していきたいです。

「感情」を深く掘り下げて、考えるクセをつける

――では、本業であるオイシックス・ラ・大地においての今後の課題は?

採用広報担当として「オイシックス・ラ・大地を理想の状態として見せたい」という目標が今は第一にあります。当社は過去2年間で2回経営統合してきたという背景もあって、先ほどもお話した通り「多様性がある」ことがすでに社としての大前提になっているんですね。兼業・副業している社員が常に十数名いる状態ですし、時代的にも今後はパラレルなキャリアを持つ人がさらに増えていくだろうなと感じています。その多様性を魅力としてもっと発信していけたらと思っています。

本業も兼業もただこなしているだけではもったいなくて、今いる場所で自分の何をどう活かして仕事をするのか、どういうバリューを出すのか、ということをしっかり意識しておくことは大事だな、って最近思うんです。常に「考える」クセをつけておく。

オイシックス・ラ・大地の社長もよく言うんですよ。「毎日の生活の中で考えるクセをつけることは、誰でもできることなんだ」って。

たとえばコンビニに行くといろいろなお茶を売っていますよね? その中からどれかひとつの商品を選んで買う。何気なく無意識でやっているようでも、そこには何かしらの理由が必ずある。「なぜ自分は今日このお茶を選んだんだろう」というところを深く掘り下げていく。そういう考えるクセを日々つけることが大事なんだそうです。

――自分の中の感情の動きを能動的に見つめて、分析する。副業・兼業に限らず、「好き」「楽しい」「得意だ」の延長線上で仕事を見つけようとするのなら、そういった視点はとても重要な気がします。

きっとそうですよね。だから、「好きなことが見つからない」と悩んでいる人は、自分はどんなときなら楽しいと感じるのか、テンションが上がるか、ワクワクするのかを見つめ直してみるといいのではないでしょうか。そうすることが自分だけの「好き」を見つけることに繋がる気がします。

(取材・文:阿部花恵 編集:阿部綾奈/ノオト)

  • 小川佐智江さん

    取材協力:小川佐智江さん

    オイシックス・ラ・大地株式会社 人材企画本部 人材企画室 人材スカウトセクション。2016年1月に入社。並行して日本酒の普及・PRを目的とした会社を起業するため動き出す。17年12月「MYSH sake bar」をオープン。元「ミス日本酒2015」グランプリの経歴も持つ。

  • ライター:阿部花恵

    編集者・ライター。働き方、ジェンダー、セクシュアリティ、差別などを中心に執筆・編集を行う。編集担当の近著は『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(石川善樹、吉田尚記/KADOKAWA)。

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