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Freee

仕事をしながら、仲間3人がクラウドファンディングでロックバーを開くまで 芹沢孝広、日比谷尚武、竹内瞳(ともにshhGarage)×freee前村菜緒対談

今年10月1日に渋谷にオープンしたロックバー「shhGarage」。もともとはホームパーティーとして始まったコミュニティーが、次第に規模を拡大して開業に至ったというこのお店。運営にあたる3人は、いずれも経営者や会社員として働くパラレルキャリア組です。

クラウドファンディングで資金を募ってオープンにこぎ着けるまでの経緯や、本業とのバランス配分など、気になる舞台裏をパラキャリ編集長の前村菜緒が直撃しました。

お話をお聞きした人

  • 芹沢孝広さん

    芹沢孝広さん

    合同会社ガレージ代表社員。このほか、合同会社ヒットザライツ代表社員、株式会社クリスク取締役、株式会社PR Table共同創業者など複数の肩書きを持つ。

  • 日比谷尚武さん

    日比谷尚武さん

    合同会社ガレージ代表社員。このほか、Sansan株式会社コネクタ、株式会社PR Table社外取締役、一般社団法人 at Will Work理事など、複数の肩書きを持つ。

  • 竹内瞳(以下、ひとみ)さん

    竹内瞳(以下、ひとみ)さん

    合同会社ガレージ代表社員。普段は合同会社SimpleAで働く会社員。

  • パラキャリ編集長 前村菜緒

    インタビュアー:パラキャリ編集長 前村菜緒

    freee株式会社 個人モバイル事業本部 マネージャー。学生時代、freee創業期3名の時期からエンジニアインターンとして参画。広報、マーケティング、事業戦略など幅広く担当。2017年に開業し、個人としても新たな働き方を実践中。

「本業」と「副業」を分かつものは何か

  • 前村

    前村

    皆さんはそれぞれほかに仕事を持ちながら、こうしたバーを経営されているわけですよね。本業との両立について、いろいろ苦労もあるのでは?

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    何が本業で何が副業かというのは、実はあまり意識していないんですよ。拘束時間でいえば、この店にいる時間が一番長いけど。2人はどう?

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    確かにあまり考えたことがないですね。むしろ、昼間はどこで何をやっているのか毎日バラバラなのに対して、夜は必ず店で過ごしているわけですから、ここにいるときのほうが安定している気がします。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    私は経営コンサルティング会社の社員ですが、完全リモートワークなので通勤もなく、日中は家で仕事をしたり、打ち合わせで外へ出たりと、その日によってやはりばらばら。夜になると、こうして渋谷へ来る感じです。

  • 前村

    前村

    どの仕事がメインワークか、という意識は皆さん持たないようにされているんですね。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    そうですね。メインって一体何だろうと考えてしまいます。全部メインですよ。全部でひとつ。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    収入や拘束時間の配分が決定づける”何か”ではなくて、すごく楽しくやれていることがあるなら、それが自分にとってのメインなのかな。「shhGarage」はまさにそれですし、simpleAの仕事ももちろん楽しい。もっとも、楽しくない仕事なんてこの世にないと私は思っているんですけど。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    いいね、ママっぽいコメントだ(笑)。

「本業」と「副業」を分かつものは何か

あえて事業を意識しない3人のパラレルキャリア

  • 前村

    前村

    芹沢さんと日比谷さんは複数の会社の経営に携わり、竹内さんは会社員をやりながらのバー経営者。つまりこの「shhGarage」の運営は、皆さんにとって数ある事業の1つということなのでしょうか?

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    一応、この店を運営するために合同会社ガレージという会社を作り、財務や契約の面が整理できるようにはしています。この3人は、合同会社ガレージの共同代表という立場ですね。

  • 前村

    前村

    すると、将来的にこのお店を大きく育てたいという思いも?

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    飲食で事業拡大というのではなくて、コミュニティを大きく育てたいです。バーはそのための場所。「shhGarage」はもともと、僕と日比谷がそれぞれの友人知人を集めて行なっていたホームパーティーから始まっていて、竹内はその頃のゲストの1人。つまり、飲食事業をやろうという気持ちは誰も持っていなかったんですよ。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    なにしろ、ただ好きな音楽を聴きながらお酒を飲みたいという、すごく単純な欲求から始まっていますからね(笑)。

あえて事業を意識しない3人のパラレルキャリア
  • 日比谷さん

    日比谷さん

    家賃などを支払えるだけの売り上げは確保する必要があるけど、飲食業として事業拡大を目指しているわけではないんです。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    それに、こうして店舗にしてみて痛感しましたけど、飲食業って本当に難しい。これを専業にして食べていける人って、今さらながら尊敬します。

  • 前村

    前村

    つまり、あえて事業やビジネスとして捉えない起業。パラレルキャリアの形として、非常にユニークですよね。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    会社にはしているものの、起業という意識自体が希薄ですね。まだ始めたばかりで、利益が出ているわけでもないですし。ただ、結果的にここで出会ったお客さん同士の間でビジネスが生まれたり、雇用につながったりすることがあるのはうれしいですよね。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    それはあくまで結果なんですよね。お酒好きな友人、音楽好きな友人が集まって、たまたまそこでグルーヴが生まれて仕事になった、という。ただのホームパーティーだった頃の精神を忘れていないから、今もこうして楽しい空間でいられるのではないかと思います。

クラウドファンディングで開店資金を調達

  • 前村

    前村

    ホームパーティーからお店に、というのも思い切った決断です。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    実は昨年1年間は、五反田で知人の店を借りて、週に2度ほど開催していました。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    そこでさらに新しい仲間が増え、レコードも増え、手狭になったのでちゃんと独立しようということになったわけです。人数が多くなると、どうしても会費を徴収することになります。だったら店舗としてやったほうが、財務上も無理がないですからね。

  • 前村

    前村

    「shhGarage」ではその際、自己資金を一切使わず、クラウドファンディングで資金を調達されたそうですね。これにはどのような意図が?

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    単にお金がなかっただけです(笑)。3人とも家庭持ちですから。

     

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    そうだよね(笑)。手持ちの資金でやれるなら、それに越したことはなかったんですよ。

     

  • 前村

    前村

    どのくらいの金額が調達できたのでしょうか。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    支援者183人で、総額512万5000円でした。目標金額は300万円だったので、これは本当にありがたかったですね。

クラウドファンディングで開店資金を調達
  • 前村

    前村

    それはすごい! 仲間と音楽とお酒を楽しみたいという思いから、こういう場が実現できたのも、やはり皆さんそれぞれが柔軟な働き方をされていることが大きいですよね。フルタイムで勤務する会社員では、なかなかできることではないと思います。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    うーん、でもそれは本人次第じゃないでしょうか。結局のところ好きでやっていることなので、「毎朝9時出社だから夜の仕事はツラい」と感じるかどうかは自分次第。その場との関わり方で気持ちが大きく違いますよね。私たちも、この空間が楽しくて面白いからやりたい、という気持ちが原動力になっていますし。

  • 前村

    前村

    なるほど。本人のモチベーションと心持ちによって、こうした趣味を実現するための手段としてのパラレルキャリアも可能であるという好例ですね。

理想のパラレルキャリアの形とは?

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    つい最近も、某大手企業が副業を解禁するというニュースが話題になりましたけど、僕はまだまだ本当の意味でパラレルキャリアが浸透するには時間がかかると思ってるんですよ。

  • 前村

    前村

    それはどういう意味でしょう?

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    今のところ、事前に会社の許可が必要だったり、あくまで「本業に差し支えない限り」と、ただし書きが付いていたりするケースばかりじゃないですか。副業は本業に悪影響を与えるもの、という認識なんです。良い影響の方にはフォーカスしていない。会社側とすれば、世の中の潮流に敏感であることをアピールしようとか、それによって採用を有利にしたいとか、宣伝の域を出ていないと思います。

  • 前村

    前村

    確かにそうかもしれないですね。副業を許可している企業の多くはまだ、本質的なパラレルキャリアの形には程遠いのかもしれません。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    逆に、うるさいことを一切言われず、ただ「副業OK」とされるのも、働く側にとっては相当厳しいことだと思うんです。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    それは本当に同感。完全に結果だけが求められちゃうわけだからね。それに、いくら会社側が副業を認めていても、「今からほかの会社の仕事があるので、ちょっと抜けます」とは、なかなか言いにくいでしょう。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    そうだよね。だったら1つの会社で全力を尽くすほうが楽だし、パフォーマンスを発揮しやすいという考え方もある。

    あと、パラレルキャリアの必要性はライフステージによっても変わると思う。結婚や出産、育児、それに介護といった家庭の状況に合わせて自分の働き方を選べる社会になると理想的です。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    うん、必要に合わせて自分の意思で選択できることが大切ですね。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    その意味では僕の場合、所属する会社とこの店、そして家庭というのは、すべて同じフィールドの中にあるもの。経営も育児も、全部で1つのプロジェクトという感覚で。

     

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    僕らが3人とも、そういう既存のイメージにとらわれない働き方をしてきたからこそ、この店の実現にもつながったわけです。

理想のパラレルキャリアの形とは?

これからの「shhGarage」が目指すもの

  • 前村

    前村

    夜こうしてお店に立っていることで、ほかの仕事や日常生活に何か影響はありますか? たとえば体力面とか……。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    決定的なデメリットはないですが……眠い日はあります(笑)。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    うん、どうしようもなく眠い日はあるね(笑)。でも、それはこの店があってもなくても変わらない気がします。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    僕はショートスリーパーなので大丈夫(笑)デメリットがあったら、そもそも店を続けようとは思わないですよ。今だって、何か不都合があればいつでも辞められるわけですから。それでも続けているのは、僕らにとって楽しいし、メリットしかないからです。

  • 前村

    前村

    つまり、コミュニティとしての恩恵がたくさんある、と。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    とくにこうして渋谷に移転してからは、渋谷の街づくり関係者とか、渋谷を拠点にするベンチャーや企業の人たちが来てくれたり、渋谷ならではのゲストが増えたりしているのが楽しいですね。この先、思いがけないプロジェクトにつながるかもしれないし。

これからの「shhGarage」が目指すもの
  • 前村

    前村

    皆さんはこの「shhGarage」を、今後どうしていきたいですか?

     

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    続けていきたい。それがすべてかな。

  • ひとみさん

    ひとみさん

    うん、私も同じです。こういう空間があって楽しく過ごせることが第一。あとは、来てくれた人たちも同じように楽しんでくれている様子を、カウンターから眺めていられれば最高ですね。

  • 日比谷さん

    日比谷さん

    僕も同じく。何か新しいことをやりたい、という場ではないんですよね。こういう空間が必要だっただけで。

  • 芹沢さん

    芹沢さん

    ただ、続けていくためには、現状維持ではだめですよね。続けていくために、改善して伸ばしていく必要はあると思う。正直、ここは家賃も安くないですし、頑張らなければいけません。

  • 前村

    前村

    皆さんの思い入れがたっぷり詰まった大切な場所であることが、よく伝わってきました。ぜひ、楽しいパラレルキャリアの1つの形として、これからもお店を盛り上げてください。本日はありがとうございました。

(取材・文:友清哲 編集:南澤悠佳/ノオト)

  • ライター:友清哲

    フリーライター&編集者。主な著書に『日本クラフトビール紀行』『物語で知る日本酒と酒蔵』(ともにイースト・プレス)。『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。

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