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急増する副業系サービスの課題は? シューマツワーカー・松村幸弥さんが目指す働き方のビジョン

政府が推進する働き方改革によって、「副業元年」とも呼ばれた2018年。多くのビジネスパーソンが副業・兼業を求めるなか、副業の人材紹介事業に乗り出す企業も増え始めています。

株式会社シューマツワーカーは今年10月、100を超えるサービスを掲載した「副業サービスカオスマップ」を発表しました。同社もまた、副業マッチングサービス「シューマツワーカー」を運営しています。勢いを増す副業市場はサービスが充実する一方で、クリアすべき課題も見つかっているようです。同社代表の松村幸弥さんにお話を伺いました。

借金を返すために副業を探すも「怪しい副業」しか見つからなかった

――まずはサービス「シューマツワーカー」について教えてください。

2017年7月にスタートした、副業を始めたいというIT人材と企業をマッチングさせるサービスです。主にエンジニアやデザイナー、マーケターが対象で、現在は約5000人の登録者がいます。導入企業は130社以上です。

――どのような流れで副業が決まるのでしょうか?

登録いただいた内容から経験やスキルなどを確認し、面談をします。カフェなどで対面で行うこともあれば、オンライン上で話す場合も。話を聞いたあとに、条件に合う案件を紹介して、本人が希望するようであれば経歴書を作成いただいて企業側にお渡しします。

その後、企業側が「会いたい」となったら、僕らが同席した上で企業と候補者の面談をセッティングします。そこでお互いに話し合ってマッチしたら、スケジュールを合わせて副業がスタート、という流れです。

――副業スタート後のサポートは行っていますか?

はい。副業が決まった段階で、社内で担当のコンシェルジュを決めてサポートを行うのがシューマツワーカーの特徴なんです。副業社員の勤怠管理やモチベーション維持のためにも、定期的に連絡を取っています。スタート後1カ月経ってどうかなど、副業社員とコンシェルジュの2名で経過面談を行っています。

――マッチング後にもしっかりサポートしてもらえるのは、利用者にとってはありがたいですね。そもそも松村さんが副業サービスを始めたきっかけはなんだったのですか?

僕は新卒でソーシャルゲームの会社に入ったんです。ただ僕自身はゲームには全く興味がなくて(笑)。毎日パソコンに張り付いて、同じ景色を見ながら働くのもキツくて、3年目のときに自分の働き方を見直し始めました。

その時、何を思ったか投資家になろうと決めて、投資信託を始めました。当時通っていた渋谷のバーで良さそうな儲け話を聞いて、200万円を借金して投資したのですが、半年後にこれが詐欺だったことが判明しまして……。借金だけが残ってしまったんですよ。

――なかなか衝撃的な体験でしたね……。

とにかく借金を返さないとならないので、副業をして収入を増やそうと考えました。でも当時、ネットで「副業」と検索してみても、どうにも怪しい仕事しか引っかからない。うまく情報が集められず、副業ができなかったんです。その体験が、副業の紹介サービスを作ろうと考えたきっかけでした。

IT人材の副業に特化したのは、メディア運営会社を経営する女性との会話からヒントを得ました。その会社が運営するサイトは、WordPressで作られたものだったのですが、エンジニアは社内ではなく外部の知人だったんです。サイトにとってWordPressの構築や改修管理はすごく重要なはずなのに、エンジニアをフルタイムで雇わず、優秀な人に副業でお願いすれば良いという判断だった。このように、正社員ではなくて副業社員として手伝ってほしいニーズを抱えている企業は多いんじゃないか。副業だからこそ当てはまるポジションがあるんじゃないか。そう思ったのです。

副業に向いているのは「重要度は高いけど、緊急度は低くて後回しになっている業務」

――今年10月、企業に向けた「即戦力で活躍する 副業社員の活用ガイダンス」を発表しました。ここに掲載されていた「副業サービスカオスマップ 2018」が話題になっていましたね。

サービスマップは2017年にも発表していて、SNSでたくさんシェアしていただきました。ご存じのとおり、副業系の人材紹介サービスはかなり増えていて、2018年版はさらに充実しています。しかしその一方で、すごい勢いで閉じているサービスも少なくありません。なかなか登録者や企業を集められないのが原因のようです。副業市場は盛り上がっていく反面、まだまだ課題は多いと感じています。

――サービスが増えることで、副業を始めやすい環境が整いつつあるように見えていました。いったいどのような課題があるのでしょうか?

確かにサービスは増えていますが、それでも副業が見つからないと悩む人は多いんですよ。実は、シューマツワーカーも登録していただいた方のうち10%にしか企業を紹介できてないのが現状です。副業をしたい人に対して、副業社員を受け入れてくれる企業が少ないのです。

企業側も「副業社員を入れたい」と考えてもそのためのノウハウが不足しているので、そこを解消しなくてはならない。副業に向いている業務と向いていない業務があると思っていまして、やはり「緊急度が高い業務」は副業社員には不向きです。「今日中にこれ直して」といった緊急性の高い仕事だと、副業社員はすぐに着手できない場合が多いですから。

「重要度は高いけど、緊急度は低くて後回しになっている業務」が副業社員に向いています。たとえば、社内ツールシステムの開発業務、マーケティングツールの検証・導入、といったような仕事ですね。

――なるほど。ちなみに、マップの中で松村さんが注目している副業系サービスはありますか?

いま盛り上がっているなと感じるのは「Saleshub(セールスハブ)」ですね。商品を売りたい企業と買いたい企業を繋げて、商談のアポイントが取れたらお金が入る営業系の副業サービスです。副業社員は、掲載されている商材から自分が売り込めそうなものを選択して営業します。なかには、一度成約したら毎月一定金額が入ってくる場合もありますね。とにかく人脈の広さが重要になる副業、前職時代の僕だったら必死でやっていると思います(笑)。

勤怠管理に進捗共有… 相手を安心させるコミュニケーションを

――実際に副業社員を採用した企業からは、どんな悩みの声が上がっていますか?

副業社員に満足できていない原因を探ってみると、そもそもやり方が間違っていることが非常に多いんです。例えば、定例会を全く行っていない、とか。1カ月も会って話していない状態で仕事をしていたら、そりゃズレが生じてきます。

このように副業の課題として、マッチング後にうまくいかないケースが少なくありません現状うまくいっているのは、もともと知り合いだった人を副業社員にしているケースが多いですね。やはり最初のころは、知らない人との相性がわからないですし、どうしても不安がつきまといます。僕らもできるだけ事前の面談などは手厚く行なっているのですが、企業へのサポートはまだまだ改善の余地があると考えています。

――逆に、副業をする個人が気をつけるべきポイントを教えていただけますか?

副業を始める際、コンシェルジュから副業の心得を伝えるようにしているのですが、やはり勤怠管理や進捗共有といったコミュニケーションが重要です。時短やリモートワークは実態が見えないので、企業側が不安がります。ですから、相手を安心させる仕事の進め方を心がけることがまず大事です。

それから、モチベーションの維持にも気を配っています。僕らは、モチベーションを保つための要素は7つに分けて意識しています。内的要素として「業務内容の面白さ」、「ビジョン・ミッションへの共感」、「成長の実感」、「一緒に働く人への尊敬」、「報酬」の5つ、外的要素として「本業の状況」、「プライベートの状況」の2つです。

今後はこれらを数値化し、副業社員のモチベーション管理を行う予定です。もし副業で人間関係に悩んでしまうようなら、一度僕らを交えて飲み会を開くなどして、関係改善に努めていきたいですね。

――確かに毎日オフィスで会うわけではないからこそ、たまに発生する対面のコミュニケーションがとても重要になりますね。

総合的に見て、副業ってやっぱり難しいんですよ。本業では優秀な社員でも、副業では活躍できない人も少なくありません。特に、うちで副業を始めるようなスキルが高いエンジニアの中には「副業なんて余裕だ」と考える方もいらっしゃるのですが、うまくいかないことも現実的に起こっています。こういった細かい副業のノウハウは、これからさらに発信していくつもりです。

――個人にとっても企業にとっても、副業しやすい社会になっていくことがシューマツワーカーのビジョンなのですね。

副業に限らず、働き方そのものを自由化していきたいんです。リモートワークや時短勤務、フリーランスなど、働き方を自由にしてお金を稼げれば、人生の選択肢はもっと広がります。例えば、「年末に家族をハワイに連れていく」、「欲しい車を買う」、「タワーマンションに引っ越す」など、副業は今までできなかったことをどんどん実現させる可能性を秘めている。誰もがそんな選択肢を持てる社会を作っていきたいと考えています。

(取材・文:阿部綾奈/ノオト)

  • 松村幸弥さん

    取材協力:松村幸弥さん

    1989年、石川県金沢市生まれ。横浜国立大学卒業後、新卒でソーシャルゲーム会社に入社。会社員時代に詐欺に遭い200万円の借金を抱えた経験より起業を志す。2017年独立し、株式会社シューマツワーカーを創業。

  • ライター:阿部綾奈

    有限会社ノオトの編集者・ライター。ミレニアル世代向けのカルチャー・ビジネスメディアのディレクションを主に担当。

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