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副業解禁はポジティブに働くための環境整備 ソフトバンクが進める「Smart&Fun!」な働き方

今年の1月、政府の「働き方改革」の一環で、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しました。その影響から、昨今は大手企業が相次いで副業を解禁し、話題になっています。

働き方が多様化するなかで、企業の副業解禁は必然なのか? どんなメリット・デメリットがあるのか? モデルケースとして注目されているソフトバンクの「副業解禁」の経緯や承認基準について、人事本部・石田恵一さんにお話を伺いました。

「副業解禁」は会社にとっても社員にとってもwin-winの施策

――昨年の11月に副業解禁を発表し、大変話題になりましたが、まずはその経緯を教えてください。

当社では昨年の4月から「Smart&Fun!」をスローガンに働き方改革をスタートしました。社員がスマートに楽しく仕事をして、よりクリエイティブ、イノベーティブなことに取り組める環境を目指すという取り組みです。

具体的には、ITの活用促進や在宅勤務、サテライトオフィスの活用、コアタイムのないフレックスタイム制の導入などで残業時間や勤務時間、移動時間の削減(Smart)に取り組んでいます。そうして作り出した時間を新しい取り組みや社員が成長できることに当て、よりクリエイティブ、イノベーティブに楽しく働こう(Fun)という活動です。

2年限定ではありますが、「Smart&Fun!」支援金として社員全員に毎月1万円を支給し、自己啓発セミナーや健康・体力作りのためのジム、異業種の方々との飲み会などに使ってもらい、自己成長につなげようという試みも行なっています。副業も働き方改革の取組みの一環として解禁しました。

――「クリエイティブ、イノベーティブな仕事につなげる」というのが、副業解禁の目的ということでしょうか。

企業としての目的はその通りです。クリエイティブ、イノベーティブは、企業が成長していくうえで不可欠な要素。イノベーションは既存値と既存値の掛け合わせによって起こると言われています。つまり、自分の知っていることと別の人が知っていることがかけ合わさった時に、イノベーションは発揮される。副業は、まさに社内にある知識と社外にある知識を掛け合わせるための良い機会だと考えました。

社員にとっても大きなメリットがあります。社内ではできない多様な経験によって自己成長につなげることができるし、新たな人材ネットワークの構築にもつながります。副業解禁は、会社にとっても社員にとってもwin-winの施策だと思っています。

「副業解禁」は大きな改革ではなく、既存制度の拡大

――御社ほどの大企業となると、「禁止」から「解禁」にするためのコンセンサスを得るのは大変だったのでは?

当社においては実はそこまで大きな反対などはありませんでした。というのも、「原則禁止」ではありましたが、これまでも特別な事情、例えば親の会社を手伝いたいとか、単発の講師の依頼を受けるなど、個別に副業を認めていた例は少なからずあったからです。

そのなかで大きな問題がなかったどころか、逆に許可した社員に話を聞くと「仕事の幅が広がった」などのポジティブな意見が多かった。これは有効活用すべきという意見が人事部内からあがったことで動き出したのですが、これまでにそういった例があったので経営陣の承認は比較的スムーズに得ることができました。

――これまで一部のみ許可していた制度の間口を広げたということなのですね。

はい。「原則禁止」で一部の人だけが特例として利用していた制度を「原則禁止」をとって「許可制」という言い方に変えて、社員全員を対象にするというメッセージを出しました。

――メッセージを聞いた社員の反応はいかがでしたか?

「副業を認めてくれる会社であることが誇らしい」、「会社を辞めないとできないと思っていたことが、働きながらできるのはありがたい」といったポジティブな意見が多くありました。

許可・不許可のガイドラインは、ごく一般的なもの

――承認の基準はどのように設定しているのでしょうか。

許可基準は「本業に影響を与えないこと」と「本人のスキルアップや成長につながること」。不許可事項としてあげているのは「社会的信用、秩序を乱すもの」「同業他社系のもの」「公序良俗違反のもの」など、ごく一般的なものです。

それに加えて、労働時間管理の観点から、当社では「他社と雇用契約を締結するもの」も不許可としており、業務委託や個人事業主としての活動に限定しています。また、事前に副業の頻度などについてもヒアリングし、過重労働にならないかなども確認しています。

――副業解禁にあたって、情報の漏洩や本業への影響などのデメリットもあると思いますが、何か対策はしていますか?

問題になった時の担保として、制約事項を列挙し、あらかじめ同意をしてもらっています。内容は「業務中に活動しない」や「機密情報を漏らさない」など、これもいたって一般的なものです。違反したら損害賠償の責任を負うことになり、懲戒処分にもなり得るといったことも書かれています。対策として行っているのはこれだけのことではありますが、今のところ問題が起きた事例はありません。

――具体的にどういった職種の副業申請があり、許可・不許可を出したのでしょう。

職種は多岐に及んでいます。プログラミングやWebサイトの作成、知人の企業支援、執筆業をしているエンジニアの社員などもいますが、もっとも多いのは研修などの講師です。また、仕事内容とは関係のない趣味の延長のケースもあります。例えばヨガのインストラクターやキックボクシングのコーチなどです。

今のところ不許可となった申請は多くはありませんが、不許可の理由の大半は、雇用契約が必要な副業です。その他、本業と競合しているケースなど、基本的には不許可事項に当てはるもののみです。

――副業は若い人ほど受け入れやすく、年齢が上がるほど受け入れにくいという印象がありますが、そのあたりはいかがでしたか?

部署や年齢に関係なく、まんべんなく申請がありました。年齢でいうならば、20〜30代と、40〜50代の数はほぼ変わりませんでしたね。若干の特徴が見られたのは、専門性の発揮の仕方です。年次が上の社員は業務経験で得た知識を中心に活動するケースが多く、年次の若い社員は大学時代に勉強していたことやNPO法人などの活動を継続するなど、自分の興味のある分野の申請が多いという印象です。

副業解禁はポジティブに働くための環境整備のひとつ

――副業を解禁にしてから、もうすぐ1年が経過しますが、効果のほどはいかがですか。

よく聞かれる質問なのですが、数字に現れるほどの効果はまだみえていないというのが正直なところです。現在の許可数自体が320〜330件程度で、全社員の約1%でしかありませんからね。

とはいえ、個人的なレベルでいうならば、少しずつ成果に結びついているという声はあります。プレゼンが苦手だったけれど人に教える副業を始めたのをきっかけに克服できた、これまでとは違ったネットワークができて新しい情報を早く吸収できるようになった、業務の幅が広がった、専門性が高まったなどの意見があがってきています。数字には反映されなくとも、一定の効果は得られていると感じています。

また、働き方改革全体の取組みに関しては、約7割の社員が取り組みを始める前と比較して、「業務生産性」や「自己成長のための活動」、「イノベーティブ・クリエイティブな取り組み」などが増加したという回答をしており、こちらも一定の効果は得られていると考えています。

――大企業の取り組みということで、内部のみならず外部からの反響も大きかったと思います。

思っている以上に副業を検討している企業は多く、導入の背景や基準など、詳細を知りたいというお問い合わせをたくさんいただきました。大々的にメッセージを出している企業がまだ少ないので参考にしていただけたのだと思います。

国を含め副業を推進しようとする流れが広がっている中で、今後解禁していく企業は増えていくのではないでしょうか。逆に副業禁止の企業のほうが少なくなっていけば、入社希望者や社員にデメリットと受け取られてしまう、というようなことが遠くない将来にやってくるかもしれません。

――最後に、働き方や副業に関して、今後の展望や課題はありますか。

副業は、あくまで働き方の選択肢のひとつだと考えています。会社としては、副業だけでなく、本人がより働きがいをもてるような環境を整えていきたいと思っています。今の仕事を頑張りたいという人にはより頑張れる環境を提供し、他の部署の仕事に興味があるのなら部署を異動できる制度も整えています。新規事業への進出も積極的に行なっているので、より社員の選択肢は広がっていくはずです。

人によって仕事に求めるものは違います。それらを受け止められるような環境、選択肢を増やし維持していくことが重要だと思っています。副業を含めて、社員が「Smart&Fun!」をより実践できる環境をしっかりと作っていくことが今後の目標です。

(取材・文:塚本佳子 編集:阿部綾奈/ノオト)

  • 石田 恵一さん

    取材協力:石田 恵一さん

    ソフトバンク株式会社
    人事本部 人事企画部 労務厚生企画課 課長
    元公務員。2008年にソフトバンク株式会社の子会社であるSBアットワーク株式会社へ入社し、2010年よりソフトバンク株式会社の人事部門所属。組織人事(HRビジネスパートナー)担当を経験後、人事企画部へ。2017年より人事企画部 労務厚生企画課長。人事制度の策定、運用とあわせて、働き方改革の推進やLGBT支援などを担当。

  • ライター:塚本佳子

    ジャンルを問わず、幅広い分野で執筆活動を行なっている。週末のみ自宅ショップ「Fika」店主。『著書は『小さくてかわいい家づくり』(新潮社)、『Fika』(Pヴァイン)などがある。

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