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Freee

「過度な自己PRは疲れるだけ」 月読寺住職・小池龍之介さんが説く、仕事の縁のつなぎ方

「複数の仕事をしていると、視野が広がる」
「片方の仕事でミスをしても、もう片方の仕事がいい気分転換になって、ネガティブな気持ちをひきずらない」

複業をしている人からは、こうした話をよく耳にします。複数の仕事をもつ働き方は、心の平穏を保つのにも役立つの? 鎌倉にある月読寺住職の小池龍之介さんにパラキャリ編集長の前村菜緒が聞きました。

対談した人

  • 小池龍之介さん

    小池龍之介さん

    月読寺住職。文筆家。2003年にウェブサイト「家出空間」を立ち上げる。同年から2007年まで、寺院とカフェの機能を兼ね備えた「iede cafe」を展開した。現在は宗派仏教を超えた立場で、自身の修行と一般向けの座禅・瞑想指導を続けている。『考えない練習』(小学館)など、著書多数。

  • 前村菜緒

    前村菜緒

    freee株式会社個人モバイル事業本部マネージャー。学生時代、freee創業期3名の時期からエンジニアインターンとして参画。広報、マーケティング、事業戦略など幅広く担当。2017年に個人事業主としても開業し、企業に所属しながら新たな働き方を実践中。

仕事の入り口は受け身でもいい

  • 前村

    前村

    小池さんはご住職をされながら、文筆活動もされています。どうして2つの仕事をするようになったのでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    惰性ですね(苦笑)。そもそも、住職は職業という感覚でもなくて……。

  • 前村

    前村

    そういわれてみると、住職は職業という概念には当てはまらないような気がしますね。

  • 小池さん

    小池さん

    世間一般に、住職は法事などを行っていれば、社会的な需要があってそれに対価が支払われるので、「職業」というイメージがつきやすいかと思います。

    でも私の場合は、そうしたことをしていないものですから、いわゆる住職の仕事とは異なりそうです。けれども住職とは本来、修行を伝える人という以外のものではないはずなのです。私が寺で何をしているかというと、座禅指導を行なっています。参加者は参加費の代わりに、賽銭箱に自分の好きな金額を入れていただいております。

  • 前村

    前村

    それで生計は成り立つものでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    収入を得ることが目的ではないですからね。賽銭箱に入れていただく金額は、おそらく私の全収入の1%くらいでしょうか。収入のほとんどは、複数の連載や執筆活動、本の印税によるものです。

仕事の入り口は受け身でもいい
  • 前村

    前村

    先ほど「惰性」とおっしゃっていましたけど、小池さんが本を出されるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    昔、私が営んでいたお寺カフェのお客さんの中に、編集者がいらっしゃいました。その方が私の書いた文章を本にまとめたいとおっしゃってくれて。それを本にしたら、たまたま1冊目の『沈黙入門』(幻冬社)が広く世の中に受け入れられまして。そこから、2~3冊目……とつながっていきました。

  • 前村

    前村

    自分で何かを書きたいという欲求があったわけではない、と。

  • 小池さん

    小池さん

    最初の数冊は、私も「こういうことを書いたら、世の中の人の役に立つかもしれない」という積極的な気持ちがありました。でも、もう一通り書きましたし、それ以降は「何が何でもこれを書きたい」という気持ちは大きくないですね。人のお役に立てているのはうれしいことですが。

目の前の仕事に一所懸命に取り組めば、自然と縁はつながる

  • 前村

    前村

    小池さんのお話を伺っていると、来たものを受け入れている印象を受けました。

  • 小池さん

    小池さん

    実は、座禅会も主体的に行なっているのは、この月読寺と瀬戸内海にある私の道場だけ。ほかにも、都内や地方と、さまざまな場所のカルチャーセンターなどでも座禅の指導をしておりますが、自分がそうした講座を持つことになるなんて考えたこともありませんでした。これらはたまたまご依頼いただけたので、「わかりました」とそのまま行なっているのです。

  • 前村

    前村

    自分から働きかけたわけではないのですね。

  • 小池さん

    小池さん

    みなさん、受け身に対してマイナスなイメージを抱きすぎなのだと思います。

  • 前村

    前村

    というと?

  • 小池さん

    小池さん

    受け身というと、なんとなくだらだらしているイメージに聞こえるかもしれません。でも、仕事が入ってくるときは受け身でも、その仕事に対して主体的に取り組むのでは意味が違いますよね。

    目の前の仕事に全身全霊で取り組めば、集中しているのでパフォーマンスも上がるでしょう。その成果として何が100点かはそれぞれだとは思いますが、いいものができあがるのではないでしょうか。

  • 前村

    前村

    入り口は受け身でも、仕事に対しては、むしろ主体的に関わっていると。

  • 小池さん

    小池さん

    そうです。そして、その仕事をする姿を見た人が「この人と一緒に仕事をしてみたいな」と思うかもしれません。きちんと目の前のことに取り組んでいれば、必ず何か光るものがあるのではないでしょうか。

  • 前村

    前村

    私もいまfreeeとは別の仕事に関わるようになったのですが、たまたま「それができるなら、一緒にどう?」と声をかけられたのが始まりでした。

  • 小池さん

    小池さん

    入ってくるものを断ったり、妨げたりしなければ、自然と仕事の幅は広がっていくと思いますよ。

目の前の仕事に一所懸命に取り組めば、自然と縁はつながる

SNSで“自分”発信することで、心の幸福度が下がる?

  • 前村

    前村

    自分のやりたいことは、発信しないと気づいてもらえないですよね。最近ではSNS活用することが当たり前になりましたが、こうした自己PRは仏道にはどのように映るのでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    したい人はすればいいのではないでしょうか(苦笑)。まぁ、主張のし合いの戦いですから、心の幸福度でいえば、あまりよろしいとは思いませんが。

  • 前村

    前村

    そこには自己顕示欲が生まれるからですか?

  • 小池さん

    小池さん

    そうですね。もちろん、新しい仕事がそうしたつながりから生まれることもあるでしょう。でも、そこで発信することは、「頭で作った素晴らしい私」や「素晴らしい私がこうなりたい」というイメージの世界に埋没していることでもあります。

    それに対して、みんながどう反応してくれるかが気になりもするでしょうし、仮に良い反応がもらえたとしても、それは本質的にはまがいものではないでしょうか。そして、何も反応がないと、それを寂しく感じたり、「次はどういうメッセージを発信しようか」と考え始めたりする。

  • 前村

    前村

    仕事以外のことに気を取られすぎてしまう、と。

  • 小池さん

    小池さん

    人の反応が気になるものに心を乱されるぐらいなら、ティータイムにおいしいお茶とおやつを食べてリラックスしたほうが、仕事の効率も上がっていいような気がしますね。そのほうが、次につながる可能性もあるでしょうから。

SNSで“自分”発信することで、心の幸福度が下がる?

一つのことに執着すると、思考の目詰まりが起こる

  • 前村

    前村

    小池さんは結果的にパラレルキャリアになっていますが、そうした働き方の善し悪しについて、どのように思われますか?

  • 小池さん

    小池さん

    それに自体に良い悪いもないと思いますよ。複数の仕事が向いていればいいでしょうし、向いていない人には複数の仕事でなくても、一つの仕事でもいいと思います。私の場合は、たまたま縁が広がって複数になっていた、という結果論なだけであって。ただ、一つしかないと、そこに固執せざるをえなくなるので、心の平安を保つ上ではマイナスかもしれないでしょうね。

  • 前村

    前村

    それは、仮に仕事でなくてもいいのでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    そうですね。たとえば、休日は山登りをするなど、なにか別のことをするだけでもいいと思いますよ。

一つのことに執着すると、思考の目詰まりが起こる
  • 前村

    前村

    一つのことに固執しないことで、どういったメリットがあるのでしょうか?

  • 小池さん

    小池さん

    一つのことだけを考えていると、頭は飽きてきます。パフォーマンスが下がり、下がった分、より長い時間を割いてそれについて考えないといけなくなります。そのせいで、ますます頭が働かなくなる。執着すれば執着するほど余計に成果が出ないのは、なんとも空しいものです。

  • 前村

    前村

    でも、たとえば研究者はずっと一つのことについて没頭していますよね。

  • 小池さん

    小池さん

    過去の偉人たちにエピソードを紐解くと、新しいひらめきなどは「これを生み出したい」という欲求が静まっている気分転換のときに生まれていることが多くあります。

    それはなぜかというと、リラックスしているから。リラックスしているときはとてもいい集中状態なのです。いろんなアイデアを寝かすベースができていれば、そうしたときにひらめきやすくなるのです。

  • 前村

    前村

    たしかに、企画を考えるときひたすら机に向かっていても、何も生まれないですね……。

  • 前村

    前村

    最後に、小池さんはいまの働き方の変化の流れをどのように感じていますか?

  • 小池さん

    小池さん

    自分の体力の有無や、精神的タフさなどを踏まえ、自分に合っていることをすればいいと思いますよ。場所や時間に縛られない働き方が推奨されていたとしても、自分に能力がなければ、つぶれてしまいますから……。規則正しく時間が決まっている働き方が適しているなら、それでもいいのです。

    人は向いているものだと“今”に集中しやすくなり、それによって心の充足感を得られます。そういう見方をすると、どういった働き方でも職業でも大差はありません。とはいえ、人はどうしてもないものねだりになりがちですけれども、ね。

(取材・文:南澤悠佳/ノオト)

  • ライター:南澤悠佳

    有限会社ノオト所属の編集者、ライター。得意分野はマネー、経済。ママ向けや不動産、会計など、企業のオウンドメディアを中心に担当する。 Twitter ID:@haruharuka__

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