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東京にいながらでも、地元に還元できることがある―リトルフクオカ・ダイアゴナルラン東京 山田聖裕さんが見つけたそのヒントとは

「地方創生」と聞くと、現地にいないとできないと思いがち。しかし、工夫次第では東京で働きながらも現地の架け橋になれる方法があります。

山田聖裕さんは現在、普段は東京で経済情報サービス「NewsPicks(ニューズピックス)」「SPEEDA(スピーダ)」などを提供するユーザベースに勤めながら、東京に住む福岡県にゆかりのある人をつなぐコミュニティー「リトルフクオカ」を仲間たちと運営。さらに、ふくおかフィナンシャルグループが開いたコワーキングスペース「ダイアゴナルラン東京」のコミュニティーマネージャーも兼務しています。

本業の仕事を大切にしながらも、コミュニティーや場の運営にも携わる理由とは? 山田さんに聞きました。

福岡のスタートアップに自分の経験を還元したい

――まず、山田さんの普段の仕事内容について教えてください。

  • 山田さん

    山田さん

    ユーザーベースの部門に所属し、コミュニケーションチーム(広報・IR)の責任者を務めています。「世界一ハッピーに働く会社をつくる」これをミッションに、コーポレート部門のチームアップも推進しています。

――本業の一方で、「リトルフクオカ」というイベントを主催しているそうですね。

  • 山田さん

    山田さん

    2015年から、2~3カ月に1回のペースで開催しています。最初は福岡県出身のネット業界の人たち数人で集まっていたのですが、「1人5人は連れてこよう!」と定期的に開催し、福岡のことで盛り上がるにつれて規模が拡大。

    今では毎回のイベントに100人以上が参加し、業種年代を超えて、累計1000人を超える在京の福岡好きが集まるコミュニティーになっています。実は、ダイアゴナルラン東京のコミュニティーマネージャー就任はリトルフクオカがきっかけだったんです。

リトルフクオカの様子。写真提供=谷脇 良也さん(リトルフクオカ事務局)

――具体的に、どんなきっかけがありましたか?

  • 山田さん

    山田さん

    昨年、リトルフクオカの忘年会を開いたときに、「ダイアゴナルラン東京というのができるらしいばい。今度からそこでやるけん」という話が出たんです。それまで、ダイアゴナルラン東京のことを知らなかったのですが、後日、ネットで調べていたら、コミュニティーマネージャーを募集している記事を見つけました。

    そこには、「利用者間のコミュニティーが育まれるよう積極的に利用者とコミュニケーションを取ってほしい」「いろんな働き方をしている人が集まる場所にしたい」「複業の人でもOK」と書いてありました。

    現在働いているユーザベースでは複業を許可していて、いつか実践してみたかったことと、リトルフクオカを主催しているなかで、「福岡に何か還元したい」という思いが強くなっていたことから応募してみることにしました。

――「福岡に何か還元したい」という思いは、以前からあったのですか?

  • 山田さん

    山田さん

    割と最近で、昨年末あたりから思うようになりました。きっかけは、最近、福岡でスタートアップが盛り上がってきていること。福岡の動向を知ったことで、東京のスタートアップで10年間働いてきた経験を還元したいと思うようになっていました。

    とはいえ、今のユーザベースでの仕事は楽しくまだ続けたいので、福岡に戻るつもりはありませんでした。働く場所は東京で、事業内容としては世界を目指しています。しかし根は福岡にあり、福岡とつながっていたい。そんな自分に何かできることがあれば、自分の時間を少し使ってみたいと考えました。

――会社は複業OKなのでしょうか?

  • 山田さん

    山田さん

    はい、自由な働き方を応援していることもあって、問題はありませんでした。念のため、経営陣には事前に報告し、会社が取り組んでいる「自分がハッピーであるために、自分で働き方を決める」という姿勢をアピールするためにも、自分自身が複業を体験し、それを外に発信していくことは好影響になることを伝えて受け入れてもらいやすくはしました(笑)。

    そうしたら、「ぜひ、ほかのメンバーにも見本となるロールモデルを目指してください!」「こういう取り組みを山田さんの思いと一緒に伝えていけるといいですね」と好反応を得られました。

複業コミュニティーマネージャーを歓迎した理由

――さきほど、コミュニティーマネージャーの募集に複業の人を受け入れていたお話がありました。外部の人を巻き込む形にした理由について、ゼネラルマネージャーの岩田さんに伺いたいです。

  • 岩田さん

    岩田さん

    銀行が今後も規模の拡大を追求するなら、今の業務だけでは限界があります。新たに収益を生むものを考えなければなりません。しかし、これから新しいことをやっていくには、自社の人材だけでは発想が広がらず限界がありました。

    そこで、オープンイノベーションの観点からダイアゴナルラン東京をつくることにしたのですが、いろんな人たちのネットワークや知識を生かしたいという思いから、運営会社をはじめスタッフを外部から募ることにしました。

    コミュニティーマネージャーを複業でもOKにしたのは、ダイアゴナルラン東京を銀行や福岡ではできないことをする場にしたかったからです。そして、この場所を知ってもらうには、多種多様な背景を持つ人にコミュニティーマネージャーとして活躍してもらい、いろんな人が集う場にするのがいいだろうとなりました。

  • 山田さん

    山田さん

    僕でいえば、自分ならではの仕事として、リトルフクオカをここで開催したり、広報やスタートアップ界隈で培ったネットワークを連れてくることができます。

複業コミュニティーマネージャーを歓迎した理由
ビジュアルファシリテーションフォーラム 2017の様子。写真提供=名古屋 友紀さん(ビジュアルファシリテーションフォーラム 2017運営者)
  • 山田さん

    山田さん

    たとえば、ダイアゴナルランでの情報を発信していたことで友人から声がかかり、ミーティングの内容などをイラストにして表す「グラフィックレコーディング」のカンファレンス「ビジュアルファシリテーションフォーラム 2017」(下の写真)をここで開催することができました。

ビジュアルファシリテーションフォーラム 2017の様子。写真提供=名古屋 友紀さん(ビジュアルファシリテーションフォーラム 2017運営者)
  • 岩田さん

    岩田さん

    コミュニティーマネージャーは現在、山田さんを含め6人います。山田さんのように広報やスタートアップが専門の方もいれば、デザイナーがいたり、なかには農業しながらフリーで人事コンサルタントをしている方もいます。そのおかげで、いろんな人が集うようになりました。

    現在はコミュニティーマネージャーの知識やスキル、ネットワークを生かして、コワーキングスペースの利用者の望みをかなえたり、悩みを解決するフェーズに移行しました。利用者は銀行員では解決できない悩みを抱えていますので、非常に助かっています。

どうしたら人が集まる場になるのか、方向性の共有に時間をかけた

――本業とコミュニティーマネージャーとの仕事の配分はどうなっていますか?

  • 山田さん

    山田さん

    現在は本業や家庭とのバランスもあってコミュニティーマネージャーの仕事はセーブしているのですが、セーブする前は本業9、コミュニティーマネージャー1の割合でした。

  • 岩田さん

    岩田さん

    本業との時間配分に関しては、とくに細かい決まりはありません。コミュニティーマネージャーそれぞれで異なります。それに、求めていることが細かな雑事ではなく入居者へのアドバイスやネットワークづくりですから。

  • 山田さん

    山田さん

    僕は細かい実務など事務処理には自信がないので、スタート当初はダイアゴナルラン東京をどういう場所にするかという議論のファシリテートに時間を使いましたね。

どうしたら人が集まる場になるのか、方向性の共有に時間をかけた

――どんなことを話し合ったのでしょうか?

  • 山田さん

    山田さん

    たとえば、現在はコミュニティーマネージャーが自分のネットワークを活用してイベントを誘致、開催するという方針で運営しているのですが、これはコミュニティーマネージャー全員を集めて、「どういう場にしていくか」という、ちょっとした合宿を何回か行って決めました。このスペースの運営母体が福岡にあることと、コミュニティーマネージャー全員が兼業でシフト制のため、運営方針が決まるまでにかなり時間を使いましたね。

  • 岩田さん

    岩田さん

    ここで決まった方針によって、イベントをどんどん開催しました。イベントに来た人がこの場所を気に入ってくれ、今度はその人がここでイベントを開くなど、いい循環を生み出しています。特に11月は毎日イベントが行われ(取材日は11月2日)、12月もほぼ毎日、イベントが開催されます。

意識的に複業すると、自分のスキルが相対化できる

――本業、リトルフクオカ、ダイアゴナルラン東京と、複数の活動を掛け持つことで、山田さんはどんなメリットを感じていますか?

  • 山田さん

    山田さん

    本業への具体的なメリットはいくつかありますが、大きいものは自分自身の価値観やキャリア観への影響だと考えています。僕自身もそうだったのですが、1社だけに所属していると、自分のスキルや経験が外でも通用するものなのか不安になることがあります。

    複業だったり勉強会だったり、外の環境に意識的に外に出ることで、自分の今の立ち位置を相対化することができます。その意味では、今の複業解禁はこれまでは転職しないと得られなかった経験が、会社に所属しながら体験できるようになるので、良いことではないかと思います。もちろん会社側の受け入れ状況にもよるので、今の会社にはとても感謝しています。

――リトルフクオカとダイアゴナルラン東京については、いかがでしょうか?

  • 山田さん

    山田さん

    実は、リトルフクオカをきっかけに福岡に移住した人が出始めています。地方創生は現地にいないとできないと思われがちですが、方法によっては東京にいても何かできることがある、ということは今後も意識したいですね。

    また、ダイアゴナルラン東京は僕のように「地方が好き」「地方で何かしたい」人と、その地域の企業や自治体をつなげる場所にできる場にしていきたいと思っています。たとえばここでリトルフクオカのイベントを開いていますが、それをきっかけに「リトルグンマー」や「リトルサガ」、「リトルアキタ」など、ほかのエリアの「リトル○○」にも広がってきています。

    本業、リトルフクオカ、ダイアゴナルラン東京と、どれもこれまで培ってきた人のつながりが生かせるので、全然違うように思える活動も、それぞれがうまく機能しているといえるかなと思います。

東京で仕事しながら福岡に還元し、家庭のバランスも取る

――最後に、今後、どのように働いていきたいかをお聞かせください。

  • 山田さん

    山田さん

    振り返ってみると、僕がこれまでやってきたことは、個人が「好き」を発信できる社会をつくっていきたいということでした。僕自身、ネットで好きなことを発信してきたことで友人ができましたし、仕事もつくってきましたし。

    子どもが生まれユーザベースに転職した2015年に、自分の軸を3つ持つことを決めました。3つの軸は「仕事」「家庭」「福岡」です。東京での仕事をめいっぱいがんばりながら、家庭を両立する。そして残りの時間で、地元・福岡に何か還元できることも続ける。これが、今の自分のキャリアのイメージです。

(取材・文:大澤裕司 編集:ノオト)

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    取材協力者:  

    (写真左)

    山田聖裕さん

    株式会社ユーザベース コミュニケーションチーム(広報・IR) マネージャー。ブログ・ソーシャルブックマークなどを手がける株式会社はてなを経て、現職。累計1000人を超える在京福岡好きが集まるコミュニティ「リトルフクオカ」を運営。

     

    (写真右)

    岩田祐一郎さん

    福岡銀行にて複数の現場経験を経た後、2017年4月DIAGONAL RUN TOKYOに着任。大企業・中小企業とスタートアップ、地方と東京を交差させることによってオープンイノベーションが促進される施設づくりを目指す。

  • ライター:大澤裕司

    普段は主に企業(ほぼ製造業)を取材し、雑誌やウェブ向けに記事を書くライター。著書に『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)、『バカ売れ法則大全』(共著、SBクリエイティブ)がある。

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