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起業1年目に潜むワナは? 海外で報酬を受け取るには? パラレルキャリアにつきまとうお金周りのギモン

パラレルキャリアと一言でいっても、さまざまなカタチがあります。たとえば、会社員として働く傍ら、仲間と会社を立ち上げた。会社に所属せず、複数拠点で活動する、など。

いずれも目標に向けて邁進する一方で、お金に関する疑問が付き物です。そこで今回は、公認会計士の原 幹先生にご登場いただき、悩み相談にのっていただきました!

相談者

  • 大島佑斗

    大島佑斗

    freee株式会社・法人クラウド事業本部所属。業務の傍ら、2017年12月に仲間3人で、AR(拡張現実)の技術開発を手がける会社を起業。

  • 佐藤まりこ

    佐藤まりこ

    オランダと日本、2つの拠点を股にかけるフリーランスとして、Web構築やライティングなどを中心に活動中。

  • 回答者

    原 幹

    原 幹

    公認会計士・税理士。原幹公認会計士事務所代表。主な著書に『「クラウド会計」が経理を変える』『図解 IFRSのきほんがわかる本』ほか。

ベンチャー企業が1年目に行なう財務上のリスクヘッジとは?

  • 原

    まずは、大島さんからお話を伺いましょうか。大島さんはすでに法人として事業を動かし始めているんですよね?

  • 大島

    大島

    はい。ただ、自社での開発販売がメインなので、今のところはまだ他社と取引が成立する段階ではなく、ひたすら身内で開発を頑張っている最中です。

    心配しているのはこの先で、こうした開発系のベンチャーが今のうちに取り組んでおくべき、会計上のリスクヘッジはありますか? やはり最初から税理士さんにお願いして、万全を期するべきでしょうか。

ベンチャー企業が1年目に行なう財務上のリスクヘッジとは?
  • 原

    私がおすすめしたいのは、大変でも1期目の会計管理はすべて自分たちでやってみることです。これは創業間もないベンチャーの方によく言うことなのですが、一度自分で経理のオペレーションを経験しておくと、とくに大変なのはどの部分なのかを、身をもって理解できるはず。

    その上で部分的にアウトソースするのか、それとも税理士に委託するのかを、効率的に判断するのがいいでしょうね。

  • 大島

    大島

    確かに、どのくらい大変なのかも、まだあまりピンとこないです。

  • 原

    最初から委託してしまうと、経理の作業をアウトソースするためにかかるコストが適切なのかどうかも判断できませんから。

    実際に取り組んでみると、日々の取引記録や記帳といった作業が意外と自分たちでできてしまうのか、それともやはり非効率と感じるのか、判断材料になります。それに実際問題として、1カ月の中の丸1日を経理作業に取られることがどのくらい痛手なのか、肌感覚で理解しておくのは大切ですよ。

外貨を日本で申告する際の取引レートはどうなる?

  • 原

    佐藤さんは、日本とオランダの2カ国をまたいで事業を行なうことにどんな不安をお持ちですか?

  • 佐藤

    佐藤

    たとえば、経費の問題です。これまではカフェで作業した場合の飲食費や交通費を経費として計上していましたが、オランダでは当然、そうした経費の領収書もすべてユーロになります。ユーロは為替の変動が激しく、昨年5月と今(2018年1月時点)では1ユーロあたり10円以上も変わっています。こうした場合、どの段階のレートで計上するべきでしょうか? そもそも、ユーロで記録すべきかどうかも気になっています。

  • 原

    これは居住者なのか非居住者なのか、立場によっても異なります。佐藤さんの場合、2017年までは日本在住なわけですから、それまでの所得も日本で発生しますよね。そのため、昨年中にオランダで作業した経費についても、日本の所得に反映させることになります。その際の換算レートには明確な取り決めがあり、外貨を円に交換する際のレートである「TTS」(電信売相場)、逆に外貨を円に交換する際の「TTB」(電信買相場)が有名ですが、この場合はその中間値である「TTM」(電信仲値相場)を取引レートに用いるのが一般的です。

  • 佐藤

    佐藤

    今年以降、オランダに居住した場合はどうなるのでしょうか?

  • 原

    その場合は、日本から見て非居住者ですね。今後は円とユーロ、2本立てで帳簿をつけて申告することになります。つまり、オランダで発生した分については、ユーロ建ての帳簿が必要です。

外貨を日本で申告する際の取引レートはどうなる?
  • 佐藤

    佐藤

    ちなみに、私は昨年12月末付けで転出届けを出しているので、今の時点ですでに非居住者ということになるのですが、今後オランダでの事業がメインになるなら、日本の事業は畳んで一本化してしまったほうが、会計面ではスムーズでしょうか? 日本とオランダの両方で住民税が発生する、二重課税の状態になってしまうのではないかと心配しています。

  • 原

    まず、税金のこと以前にコスト面を考えれば、拠点が2つあればそれだけ維持費がかさみます。そのデメリットを上回るメリットがあるかどうかを、ビジネスとして考える必要がありますよね。現地に拠点があれば地場のコネクションも作りやすいでしょうし、そうしたメリットと天秤にかけて判断するのが一番です。

    その上で、2拠点を維持していくのだとしても、転出と転入の手続きがしっかりされていれば、二重に課税されることはありません。その所得がどちらの拠点で得られたものかを明確に切り分けて、それぞれの国の税制によって処理されることになります。

法人化するメリットはどこにあるのか

  • 佐藤

    佐藤

    私は、オランダの知人と翻訳業を新たに営むプランがあるんですが、向こうで法人を立ち上げるとなると、あらためて起業家VISAの申請が必要になるでしょうから、ちょっと躊躇しているんです。法人化のメリットについて、改めて伺いたいです。

  • 原

    これは事業スケールにもよります。たとえば、3年後に億単位のビジネスを見込んでいるのであれば、当然、法人化したほうがいいでしょう。逆に、手がけるビジネスが、個人のブランドを押し出して営むものであれば、個人事業でもいいと思います。

法人化するメリットはどこにあるのか
  • 大島

    大島

    ちなみに、僕らの場合は資金調達時のメリットと、後の利益の分配を見込んで最初に法人化しました。

  • 原

    企業からすると、やはり法人格を持っていたほうが取引しやすいと思いますし、いい判断だと思いますよ。それに、これがもし個人事業の3人組であれば、入金を受ける際には3人が別々に受け取るのか、まとめて入金された金額を各自分配するのかを支払側も含めて調整する必要が生じます。こうした手間を省くことができるのも、法人化するメリットでしょう。

  • 佐藤

    佐藤

    私の場合は、法人化ではなく、現地の知人に雇われる形で一緒に仕事をするのがベストかなと思っているのですが、いかがでしょうか。

  • 原

    そうですね。実際、法人格を得る前に売上が立つ場合、その入金をどう受け取るかで悩むケースは多いんです。佐藤さんの場合、個人間で揉めることがなく、所得の計算も正しく行われるのであれば、現地のパートナーの方に一度振り込んでもらい、そこから個人間でお金のやり取りをするのがスムーズかもしれません。その後、安定した売上が見込めるのであれば、その時にあらためて法人化を検討すればいいのではないでしょうか。

お金のトラブルを避けるために、対策しておくべきことは?

  • 大島

    大島

    僕は今、2つの会社の会社員という立場ですが、何か陥りやすいトラブルはありますか?

  • 原

    気になるのはやはり法人税や所得税の問題だと思いますが、新たに起こした会社についていえば、基本的には事業計画をちゃんと見据えて、法人税額と所得税額が最適な数字に落ち着く給与設定をするのがセオリーでしょう。ただし、節税のために起業したわけではないでしょうから、あくまでも事業の先行きを最優先に考えるべきですが。

  • 大島

    大島

    そうですね。今はいろいろ不安だらけですが、起業した会社を、なるべく早く軌道にのせたいです。

  • 原

    それから、月々の固定費にも気を配っておくべきでしょう。エンジニアが集まって作るITベンチャーは、扱っているものが目に見えにくいわりに、意外とお金の出入りが激しい傾向があります。

    サーバやストレージなどにかかる初期投資はやむを得ませんが、これらは毎月当たり前のように出ていくお金として気にされなくなりがちです。そのため、半年ごと、1年ごとと区切って、固定費をしっかり見直す習慣をつけることは重要です。意外と必要ないものに経費をかけ続けている会社は多いですから。

お金のトラブルを避けるために、対策しておくべきことは?
  • 大島

    大島

    なるほど、確かに気づかないうちに無駄遣いしていることはありそうですね。気をつけます。

  • 佐藤

    佐藤

    私は最初のうちは、日本での収入に頼らざるを得ないと思っているのですが、その場合、日本の口座で受け取ったお金を、海外のATMでおろして、まとめて手元の口座に送金することになります。コストを考えると、クライアントさんから直接オランダの口座に送金してもらえれば理想的なのですが、これは問題ありますか?

  • 原

    もし、取引先が為替リスクや諸経費を負担して、ユーロでオランダの銀行に振り込んでくれるなら、受け取る側のリスクが少ないのでベストです。ただ、たいていの企業は個人相手だとなかなかそこまでしてくれないでしょうから、日本の口座を使うしかありません。友人知人の個人口座を経由して、自分の口座に入金してもらう手もありますが、これはその友人にいったん所得が発生してしまうので、あまりおすすめできません。佐藤さんの場合はやはり、日本の口座にいったん資金をプールして、必要に応じてオランダに送金するのがスムーズでしょうね。

  • 佐藤

    佐藤

    疑問が解決されました! 原さん、ありがとうございます。

  • 大島

    大島

    僕もいろいろと聞けて参考になりました。ありがとうございました!

(取材・文:友清哲 編集:南澤悠佳/ノオト)

  • ライター:友清哲

    フリーライター&編集者。主な著書に『日本クラフトビール紀行』『物語で知る日本酒と酒蔵』(ともにイースト・プレス)。『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)ほか。